分極抵抗法とは?
鉄筋を自然電位から⊿E変化させたとき生じた微小電流⊿Iを計測し、<鉄筋の腐食速度>を測定する方法です。
- 直流法と交流法に大別されるが、一般に交流法が主流
- 腐食ひび割れが発生する前の評価に有効。(将来の予測に有効)
分極抵抗が大きい = 電子を移動させにくいため、鉄筋が腐食しにくい
腐食のメカニズムについては、こちらのページを参考にしてください。
分極抵抗法を行う際の注意点として、強い電流を流すと鉄筋の腐食が進行してしまうため、なるべく弱い電流で測定することが求められます。
分極抵抗の原理
高周波の電流を流すと、電流はRs~Cdlの経路を通り、全体で測定される抵抗はRsとなります。一方、低周波の電流を流すと、電流はRs~Rctの経路を通って全体の抵抗はRs+Rctとして測定されます。高低2周波の抵抗値の差からRctが求められるので、そこから鉄筋の腐食速度を推定できます。
電気二重層容量
電気二重層容量とは、電気二重層という物理現象を利用することで蓄電量が著しく高められたコンデンサ(キャパシタ)である。電気二重層キャパシタは陽極と陰極の2つの電極を持つが、この2つが二重層という名前の元となったわけではなく、両極それぞれの表面付近で起こる物理現象である「電気二重層」が元となっている。
引用元:wikipedia
測定値と計算方法
- 測定は、かぶりコンクリートの含水率に左右されるため、コンクリート面を湿布で覆う
- Rctは鉄筋腐食速度に反比例する
- 一般に、鉄筋腐食速度はRctの逆数に定数Kを乗じて、Icorrとして評価される
計算例
自然電位法とは?
鉄筋の腐食部の電位がマイナス側に変化することを利用し、鉄筋をプラス(+)、コンクリートをマイナス(-)として電位差を測定することで、鉄筋の腐食推定を行う方法です。
下表は飽和硫酸銅電極(CSE)により測定した自然電位(mV vs CSE)の判定例です
-200mV ≦ E | 90%以上の確率で腐食無し |
---|---|
-350mV < E ≦ -200mV | 不確定 |
E ≦ -350mV | 90%以上の確率で腐食あり |
参考:ASTM C 876
調査方法
照合電極の先端に、水で湿らせたスポンジ等を取付け、コンクリート表面に接触させます。電位差計の分解能は1mV以下の直流電圧計を用います。ここで、分解能を1mV以下としている理由は、計測時に流れる電流が大きいと鉄筋の腐食を促進させる可能性があるため、電位差計は電流をできるだけ流さずに電位差を測るのが望ましいです。そのため、抵抗が100MΩ以上、分解能が1mV以下の直流電流を用います。
照合電極の種類として
- 銅ー硫酸銅電極
- 銀ー塩化銀電極
- 鉛電極
- カロメル電極 等
異なる測定方法を用いた際の換算方法
2016年No.21の問題を例に、考えていきます。
【問題】鉄筋コンクリート構造物の鉄筋腐食状況を推定するため、温度条件25℃で銀塩化銀電極(Ag/AgCl)を用いた自然電位の測定を行い、-280mVの結果を得た。飽和硫酸銅電極(CSE)を用いた自然電位計測の評価をするとき、鉄筋腐食の可能性に関する次の評価のうち、適当なものはどれか。ただし、飽和硫酸銅電極(CSE)と銀塩化銀電極(Ag/AgCl)の電位(標準水素電極基準)はそれぞれ+316mVおよび+196mVとする。
ここでは、選択肢と換算表は割愛します。ここでは、考え方のみを示します。
- Ag/AgCl電極での測定値 = ー280mV
- CSE電極を用いた評価 = Ag/ClとCSEの差 120mVを電位差に加える
取り出した鉄筋の腐食量測定(クエン酸二アンモニウムを用いた方法)
コンクリート構造物から取り出された鋼材の腐食量を測定する場合は、鋼材を10%クエン酸二アンモニウム溶液(60℃)に数日間浸せきします。クエン酸二アンモニウムにさびの部分だけが溶け、健全な部分が残ります。
その後、さびを除去し、腐食面積率(腐食面積/鉄筋の表面積×100)および質量減少量を測定します。
残った健全な部分の質量を測定し、元々の質量からどれだけ減少しているかで、腐食量を測定します。