【コンクリート主任技士過去問解説】平成29年度No21~25

主任技士過去問解説

コンクリート主任技士過去問 問題と解説

【平成29年度―問題21】

 コンクリートの養生に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)低熱ポルトランドセメントを用いたコンクリートは、けい酸二カルシウム(C22S)の含有率が高く、初期の強度発現が遅くなるので、普通ポルトランドセメントを用いたものよりも湿潤養生期間を長くするのがよい。
(2)マスコンクリートの施工の際、セメントの水和熱による温度上昇を抑えるため、内部温度が上昇している打込みの翌日に型枠を解体し、散水して放熱を促進するのがよい。
(3)JASS5では、コンクリート部分の厚さが18cm以上の部材では、計画供用期間が長期の場合、コンクリートの圧縮強度が15N/mm2以上に達したことを確認すれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができるとしている。
(4)土木学会示方書では、日平均気温が10℃以上15℃未満の場合、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの湿潤養生期間は7日、早強ポルトランドセメントを用いたコンクリートの湿潤養生期間は4日を標準としている。
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正解(2)

(1)問題のとおりです。低熱ポルトランドセメントは、初期の水和熱の発生を抑えるために、アルミン酸三カルシウムの量を4%以下とします。また、水和がゆっくり進行する、けい酸二カルシウムの量を40%以上とする規定があります。
(2)誤りです。内部温度が上昇している打込みの翌日に型枠を解体し、散水して放熱をすると、内部と表面部の温度差が大きくなります。温度差が大きくなると、内部応力が増大し、ひび割れの原因となります。マスコンクリートの施工では、温度応力によるひび割れを抑制するために、パイプクーリングなどで、内部温度の上昇を抑えます。
(3)問題のとおりです。コンクリート部分の厚さが18cm以上の部材において、早強、普通および中庸熱ポルトランドセメントを用いる場合は、計画供用期間が短期および標準の場合は10N/mm2以上、長期および超長期の場合、コンクリートの圧縮強度が15N/mm2以上に達したことを確認すれば、以降の湿潤養生を打ち切ることができるとしています。
(4)問題のとおりです。土木学会示方書では、
【日平均気温が15℃以上の場合】
普通ポルトランドセメントは5日
早強ポルトランドセメントは3日
【日平均気温が10℃以上15℃未満の場合】
普通ポルトランドセメントは7日
早強ポルトランドセメントは4日
【日平均気温が5℃以上10℃未満の場合】
普通ポルトランドセメントは9日
早強ポルトランドセメントは5日
を湿潤養生期間の標準としています。
日平均気温 普通 早強 混合B種
15℃以上 5日 3日 7日
10℃以上 7日 4日 9日
5℃以上 9日 5日 12日

【平成29年度―問題22】

 柱型枠の計画において、次の計算式①および②で計算される値の小さい方が側圧Pとして作用するものとする。下図は打上がり高さを4mとした場合の計算式①および②による側圧分布の検討結果である。図中の実線は打上がり高さが4mに到達した時の側圧分布を、点線は打込みを開始して型枠最下部の側圧が最初に最大側圧Pmaxに到達する時の側圧分布を示す。型枠最下部の側圧が最初に最大側圧Pmaxに到達する時の高さH1と最大側圧Pmaxの組合せとして適当なものはどれか
ただし、型枠内のコンクリート温度は20℃、コンクリートの打上がり速度を1.4m/h、コンクリートの単位重量を24kN/m3とする。

$$\begin{eqnarray}
P &&\frac{W_{c}}{3}\left(1+\frac{100{R}}{T+20}\right){・・・・・①}\\
P &=&W_{C}{・}H{・・・・・・・・・・・・②}
\end{eqnarray}$$P:側圧(kN/m2)

Wc:コンクリートの単位重量(kN/m3
R:打上がり速度(m/h)
T:型枠内のコンクリート温度(℃)
H:コンクリートの打込み高さ(m)
Pmaxとなる高さH1(m) 最大側圧Pmax(kN/m2)
(1) 1.5 36
(2) 2.5 36
(3) 1.5 96
(4) 2.5 96
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正解(1)

式①にWc=24、R=1.4、T=20を代入します。
$$P=\frac{W_{c}}{3}\left(1+\frac{100{R}}{T+20}\right)=\frac{24}{3}\left(1+\frac{100{1.4}}{20+20}\right)=36{(kN)}$$

式②にP=36、Wc=24を代入します。
$$H=\frac{P}{W_{c}}=\frac{36}{24}=1.5{(m)}$$

【平成29年度―問題23】

 鉄筋の組立て・継手およびかぶり(厚さ)に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)重ね継手は、鉄筋を平行に重ね合わせるもので、施工が容易であるが、鉄筋の直径が大きくなると、重ね継手の長さが大きくなるため、D32程度までの鉄筋に用いられる。
(2)ガス圧接継手は、鉄筋を突き合わせ、接合部を酸素・アセチレンガス炎で加熱しながら圧力を加えて接合する方法であり、同一の径のSD345とSD390の間でも用いることができる。
(3)JASS5における屋外の最小かぶり厚さは、建築基準法に定められたかぶり厚さに10mmを加えたものであり、耐久性上有効な仕上げを施す場合には、建築基準法上のかぶり厚さを同じとしてよい。
(4)土木学会示方書では、柱の場合、はりに比べて打込みが困難となる場合が多いため、軸方向鉄筋のあきをはりの場合よりも大きい値とし、20mm以上、粗骨材の最大寸法の4/3以上、かつ鉄筋直径以上としなければならない。
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正解(4)

(1)問題のとおりです。重ね継手の継手長さは40d(d=呼び径)必要です。JASS5では、重ね継手は、原則としてD35以上の異形鉄筋には用いないこととされています。一般的には、D19以上となると、重ね継手ではなく、圧接継手や機械式接手が用いられます。また、径の異なる鉄筋同士の重ね継手の長さは、細いほうの直径によります。
(2)問題のとおりです。ガス圧接継手は、鉄筋の種類はSD490、鉄筋径はD51まで圧接可能です。鉄筋の種類が異なる場合、1ランク違いの組合せであれば、圧接可能です。また、直径が異なる場合は、呼び名の差が7mm以内であれば圧接可能です。
(3)問題のとおりです。JASS5では、屋外の最小かぶり厚さは、建築基準法に定められたかぶり厚さに10mmを加えたものです。タイル張りのように、耐久性上有効な仕上げを施す場合には、建築基準法上のかぶり厚さを同じとしてよいとされています。
(4)誤りです。土木学会示方書では、はりの場合20m以上かつ粗骨材最大寸法の4/3以上、鉄筋径以上とされています。柱の場合40mm以上かつ粗骨材最大寸法の4/3倍、鉄筋径の1.5倍以上としなければならないとされています。

【平成29年度―問題24】

 暑中コンクリートの施工において、下表に示す条件の材料をそのまま使用した場合、コンクリートの練上がり温度が35℃を超えると予想されたので、(1)~(4)に示すように使用材料を冷却して対策することとした。対策後においてコンクリートの練上がり温度が最も低くなる条件として正しいものはどれか。ただし、コンクリートの練上がり温度は計算式①によって計算するものとする。
材料 セメント 細骨材 粗骨材
単位量(kg/m3) 165 300 900 1000
温度(℃) 30 60 35 35
コンクリートの練上がり温度:

$$T=\frac{C_{s}(T_{a}W_{a}+T_{c}W_{c})+T_{w}W_{w}}{C_{s}(W_{a}+W_{C})+W_{w}}{・・・①}$$

WaおよびTa:細骨材と粗骨材の質量(kg)および温度(℃)
WcおよびTc:セメントの質量(kg)および温度(℃)
WwおよびTw:水の質量(kg)および温度(℃)
Cs:水の比熱に対するセメントおよび骨材の比熱の比を0.2としてよい。
(1)セメントの温度を40℃とした。
(2)細骨材と粗骨材の温度を30℃とした。
(3)水の温度を20℃とした。
(4)セメントの温度を50℃、水の温度を25℃とした。
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正解(2)

①式にWa=900+1000、Ta=35、Wc=300、Tc=60、Ww=165、Tw=30、Cs=0.2を代入します。

$$T=\frac{0.2(35×1900+60×300)+30×165}{0.2(1900+300)+165}=36.116$$

これに対し、(1)~(4)の各対策による練り上がり温度の低下量は(1)2.0℃、(2)3.1℃、(3)2.7℃、(4)2.4℃です。

 

【平成29年度―問題25】

 下図に示すように、スラブ状のマスコンクリート部材を連続的に打ち込んだ。コンクリートの打ち込み後に部材中心部が最高温度に達したとき、中心断面(X-X’)の温度応力分布を模式的に表したものとして、適当なものはどれか。ただし、地盤の拘束は受けないものとし、コンクリートの自重の影響はないものとする。
(1)a
(2)b
(3)c
(4)d
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正解(3)

マスコンクリートは、表面は外部に温度が逃げやすいため、温度下降が早く”収縮”しようとします。逆に、内部は水和熱によって生じた温度が放出されにくいため温度が上昇し”膨張”しようとします。

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