アルカリシリカ反応
アルカリシリカ反応のポイントは、①アルカリ骨材反応と、②吸水膨張です。
アルカリシリカ反応のメカニズム
アルカリシリカ反応は、アルカリ反応性骨材、アルカリ、水が存在する条件で発生します。
まず、コンクリート中のアルカリ成分とアルカリ反応性骨材が化学反応することで、骨材の周りにアルカリシリカゲルが生成されます。
アルカリシリカゲルは、吸水すると膨張する性質を有しているため、その膨張作用により低鉄筋比の部材では、コンクリート表面に亀甲状のひび割れが発生したり、高鉄筋比の部材では主筋方向のひび割れや鉄筋の破断が発生します。
その結果、コンクリート構造物の強度や耐久性が低下し、劣化に繋がります。
アルカリシリカ反応の対策方法
アルカリシリカ反応の対策のポイントは①アルカリ反応性骨材を使用しないこと、②アルカリ総量を抑えること、③水の供給を断つこと④アルカリシリカゲルを非膨張性に改質することが挙げられます。
アルカリ反応性骨材
アルカリシリカ反応抑制対策として、アルカリ反応性骨材を使用しないことが挙げられます。
骨材に、アルカリ反応性があるかどうかの試験には、化学法やモルタルバー法があります。
化学法
化学法は、コンクリート試料の溶解シリカ量とアルカリ濃度減少量を化学分析によって求める方法です。
基本的には、シリカ量が多いと、アルカリ反応性を有する骨材と判定されます。
具体的には、シリカ量が10mmol/L以上の場合、シリカ量がアルカリ濃度減少量を上回ると「無害でない」と判定されます。
モルタルバー法
モルタルバー法は、骨材を粉砕した資料を用いて、モルタルバー(ようかん状に固めたモルタル)を製作し、貯蔵室でアルカリ骨材反応を促進させて、その長さ変化を測定し、材齢26週の膨張量によって「無害」または「無害でない」を判定する試験です。
材齢26週における平均膨張率で判定を行い、0.1%未満の場合は無害、0.1%以上の場合は無害でないと判定されます
モルタルバー法の留意点として、”微晶質石英”を含む骨材の反応は極めて緩やかであり、26週の養生期間では判定できません。”火山ガラス”を有する骨材はモルタルバー法で判定できます。
アルカリ総量規制
コンクリート中のアルカリ総量が少ない場合、アルカリシリカ反応の被害事例が減少しているという事実があります。
アルカリシリカ反応の抑制対策として、コンクリートのアルカリ総量を3.0kg/m3以下に制限することや混合セメントを使用することが挙げられます。
混合セメント
高炉セメント
高炉セメントは、セメント中の高炉スラグの比率を40%以上とすることで、アルカリシリカ反応の抑制対策になるとされています。ここで、高炉セメントA,B,C種とは別の規定です。
A種:5を超え30%以下
B種:30を超え60%以下
C種:60を超え、70%以下
フライアッシュセメント
フライアッシュセメントは、反応抑制には、セメント中フライアッシュの比率を15%以上とすることで、アルカリシリカ反応の抑制対策になるとされています。フライアッシュセメントA,B,C種の区分とは別の規定です。
A種:5を超え10%以下
B種:10を超え20%以下
C種:20を超え、30%以下
水の供給を断つ
アルカリシリカ反応の抑制対策として、コンクリート構造物の表面に、水の供給を断つため、表面含浸工法や表面被覆工法を施す方法があります。
表面含浸工法
表面含浸工法は、コンクリート表面の組織をち密化する工法です。これにより、水分子は通しませんが水蒸気は通す(通気性がある)ため、コンクリート内部に溜まった水分を起因とする劣化の抑制に期待されます。ただし、通気性があるため、中性化の抑制には効果は期待できません。
表面含浸材には、シラン系、ケイ酸系などがあります。
シラン系含浸材
シラン系含浸材は、コンクリート面に塗布すると、アルキル基が固着します。アルキル基の間隔は、水滴より小さく、水蒸気より大きいため、吸水が抑制されます。
ケイ酸系含浸材
ケイ酸系含浸材は、コンクリート面に塗布すると、コンクリート表面のカルシウム成分が反応しC-S-H(カルシウムシリケート水和物)が生成されます。C-S-Hがコンクリートの空隙やひび割れを埋め、表面をち密化させます。これにより、外部から内部への水分等の侵入を抑制します。
表面被覆工法
表面被覆工法は、表面被覆材でコンクリート表面を覆うことで、外部からの水の供給を遮断する工法です。
表面被覆材は、外部からの劣化因子の侵入を防ぐと同時に内部の劣化因子(例えば水分)を外部に逃がすことも抑制されるため、使用には注意が必要です。
表面被覆材には、エポキシ系、ビニルエステル系、ポリウレタン系などがあります。
アルカリシリカゲルを非膨張性に改質
アルカリシリカゲルを非膨張性に改質する方法として、リチウム塩を添加する方法が挙げられます。
リチウムイオンを含むアルカリシリカ反応抑制材料として一般的に用いられているのは亜硝酸リチウムです。
亜硝酸リチウムをコンクリート内部へ浸透させる方法として、内部圧入工法が一般的に使用されています。
その他の方法
アルカリシリカ反応による劣化の対策として、コンクリートの膨張を拘束する方法があります。これは、外部拘束によりアルカリシリカ反応による膨張を物理的に抑制する方法です。
接着工法・巻立て工法など、コンクリート表面にFRPシートや鋼板などの部材を取付ける工法があります。
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