【中性化】コンクリート構造物の劣化現象について(診断士試験対策)

水分浸透を考慮した中性化による鋼材腐食

水分浸透を考慮した中性化による鋼材腐食のポイントは、①不働態被膜の破壊と、②酸素です。

中性化のメカニズム

中性化は、大気中の二酸化炭素とコンクリート中の水酸化カルシウムが反応し、炭酸カルシウムが生成する過程で、コンクリートのpHが高アルカリ(pH13程度)から中性化(pH10程度)まで低下することで起こります。

コンクリートの中性化が進行すると、pHが低下するため、鉄筋表面の不働態被膜が破壊されます。そこに、水分と酸素が供給されると、鉄筋にさびが生じます。鉄筋のさびによる体積膨張による圧力で、コンクリートにひび割れや爆裂などの、劣化が生じます。劣化が生じることにより、水分や酸素の供給量が増え、さらに鉄筋の腐食が進展します。

ひび割れの拡大や、腐食による鉄筋の断面欠損により、コンクリート構造物の耐力低下などが生じます。

ジャンカ断面

中性化のポイント

①中性化の速度は、相対湿度が50%から60%で最大となる。②混合セメントを使用すると中性化速度は速くなる。③pHの低下による鉄筋の腐食です

中性化と湿度の関係

大気中の二酸化炭素は、コンクリートの空隙内に拡散することによって侵入します。空隙内に拡散した二酸化炭素が、細孔溶液中に溶解し、コンクリート内部の水和物との反応により、コンクリート内部の中性化が起こります。このため、中性化には適度な湿度が必要ということになります。

相対湿度が低く、コンクリートが乾燥状態にあり、細孔溶液が少ない場合には、中性化が進行しにくくなります。

逆に、相対湿度が高い場合、コンクリートの空隙が水分で満たされた状態となり、二酸化炭素の内部への拡散が起きにくい状態になります。そのため、中性化が進行しにくくなります。

混合セメントの使用

細孔溶液のpHが高いほど、中性化の進行は抑制されます。細孔溶液のpHは、通常12から13の高アルカリ性です。この、高いアルカリ性を保つ役割を果たすのが水酸化カルシウムです。

混合セメントは混和材として、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフュームが用いられます。これらの混和剤は、水酸化カルシウムと反応し、水和を起こします。そのため、水酸化カルシウムが消費されることにより、細孔溶液中のpHが低くなり、中性化の抑制に対して不利になります。

一方で、混和材の水和反応により、コンクリートの組織が緻密化することで、二酸化炭素の侵入が抑制されるため、中性化進行の低減に有効となります。

つまり、混和材の使用は、有利な点と不利な点を総合すると、混和材を使用していない普通セメントに比べて、中性化の進行に及ぼす影響は同等か、不利になるということになります。

コンクリートの塩害

鉄筋の腐食とpH

コンクリート中の鉄筋がさびない理由は、高アルカリ環境下にある鉄筋の表面には、不働態被膜が形成され、その内部の鉄筋が腐食するのを防止しているためです。本来は、鉄筋に用いる鋼材はさびやすく、水と酸素が供給されると鉄筋の腐食が進行します。

この不働態被膜の破壊は、pHが11以下で開始します。

中性化の化学反応

中性化を化学反応で表すと、水酸化カルシウムは二酸化炭素と反応することで、炭酸カルシウムと水を生じます。

これらの反応は、水酸化カルシウムと二酸化炭素が水に溶解してはじめて起こります。

高アルカリ環境下での中性化

中性化の、もう一つのポイントは、高アルカリ環境下において、中性化が進行しやすいということです。

水酸化カルシウムが水へ溶解し、カルシウムイオンとなることで、中性化の反応が起こりますが、カルシウムイオンの濃度が高ければ、水酸化カルシウムが溶解し、カルシウムイオンとなる余地が少なくなります。

細孔溶液中のイオンの大部分はナトリウムイオンとカリウムイオンで、それらが多く細孔溶液中に溶解している場合に、高アルカリ環境下となります。

これらのアルカリイオンも、炭酸イオンと反応して、炭酸アルカリを生成しますが、溶解度が非常に大きいため、再び細孔溶液に炭酸イオンが溶解し、溶解度の小さい炭酸カルシウムがどんどん生成されていきます。

炭酸カルシウムがどんどん生成されていくことで、細孔溶液中のカルシウムイオン濃度が低くなり、水酸化カルシウムが溶解しやすい環境となってしまうということです。

つまり、高アルカリ環境下では、炭酸カルシウムの生成が進み、溶液中のカルシウムイオンの消費が進むため、カルシウムイオン濃度が低くなります。カルシウムイオン濃度が低くなることで、水酸化カルシウムの溶解が起こります。溶解した水酸化カルシウムは、二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを生成します。これにより、中性化が進行しやすくなります。

水分浸透を考慮した中性化の対策

中性化の劣化の進行度は、潜伏期、進展期、加速期、劣化期に分けられます。

劣化の進行度により、必要対策は変わってきます。

潜伏期は、コンクリート中のpHの低下は生じているが、鋼材の腐食は生じていない状態です。pHの低下により、不導体皮膜の破壊が開始しているため、定期的な点検を行い、劣化の進行に伴う対策を取れるように備えて置くことが重要です。

進展期は、鋼材の腐食は生じているが、コンクリートのひび割れまでは至っていない状態です。この段階では、腐食の進行を防ぐ必要があります。腐食は酸素か水のどちらかの供給を断つことにより防ぐことができます。一般的には、水の侵入を防止する、表面含侵工法が有効です。

加速期は、表面にひび割れが生じ、ひび割れから水と酸素が供給され、鋼材の腐食が加速する段階です。コンクリートの剥落の可能性が大きくなるため、ひび割れ注入工法や断面修復工法が有効です。

劣化期は、鉄筋の腐食が進行し、断面欠損が生じる段階です。この段階になると、中性化したコンクリートを取り除き、鋼材は腐食を食い止めるために電気防食工法などの採用を考えます。

今回の記事は、以上です。このページ内容を音声学習用教材として、動画を作成しましたので、ぜひご視聴とチャンネル登録をお願いいたします。

タイトルとURLをコピーしました