【診断士の問題と解説】1日5問!(Vol.47)各種調査

コンクリート診断士 問題と解説Vol.47

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 このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。

【問231_調査手法】

 コンクリートの劣化調査・測定に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)硫化水素の作用を受けたコンクリートの浸食深さを、フェノールフタレイン1%エタノール溶液噴霧による方法によって測定した。
(2)海水の作用を受けたコンクリートの可溶性塩化物イオン量を、電位差滴定によって測定した。
(3)中性化の進行したコンクリート中の鉄筋の腐食電流密度を、分極抵抗法によって測定した。
(4)アルカリシリカ反応を生じたコンクリートの骨材が含有する反応性鉱物を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって同定した。
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正解(4)

(1)問題のとおりです。硫化水素の作用により、コンクリート中の水酸化カルシウムが酸化されてpHが低下します。pHが低下した部分は、フェノールフタレインの呈色反応を示さなくなります。
(2)問題のとおりです。電位差滴定法は、コンクリート中の塩化物イオン量の測定に用いられます。はじめに、塩化物イオンを含む溶液に電極を設置し、電位差を測定します。塩化物イオンを含む溶液に硝酸銀溶液を滴定します。そして、硝酸銀溶液の滴定量と電位差の変化から塩化物イオンの量を測定する方法です。
(3)問題のとおりです。分極抵抗法とは、鉄筋を自然電位から⊿E変化させたとき生じた微小電流⊿Iを計測し、鉄筋の腐食速度を測定する方法です。分極抵抗が大きいと、電子を移動させにくいため、鉄筋が腐食しにくいと判定されます。
(4)誤りです。SEMは真空中で細く絞った電子線で、資料の表面を走査、スキャニングし、試料から出てくる信号を検出して、試料表面の拡大像を表示する電子顕微鏡です。組織表面の形状を捉えることはできますが、組織の同定はできません。アルカリシリカゲルの同定には、蛍光X線分析が適してます。蛍光X線法では、X線を照射された元素の内殻電子が励起され、不安定な状態になったのち、安定状態に戻るときにエネルギーを放出します。そのエネルギーは、それぞれの元素固有の波長を持ったX線として観測されます。観測されたX線から試料の含有元素を分析することができます。

【問232_調査手法】

 道路橋コンクリート床版の劣化調査に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)漏水の有無をサーモグラフィー法で調査した。
(2)ひび割れパターンを目視で調査した。
(3)床版厚をX線透過撮影法で撮影した。
(4)床版の剛性を載荷試験で調査した。
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正解(3)

(1)問題のとおりです。サーモグラフィー法により、コンクリート床版の表面温度を測定することで、漏水の有無を確認することができます。
(2)問題のとおりです。ひび割れの目視検査は、外観検査の基本です。現在では、撮影画像からひび割れを自動抽出するAIなども開発されていますが、基本の技術は目視検査です。
(3)誤りです。X線透過法は、X線を照射し、裏側にフィルムを配置して鉄筋やひび割れなどコンクリート内部の様子を撮影する方法です。X線作業主任者による安全管理を行う必要があり、鉄筋や配管などの埋設物、空洞やひび割れを高精度で探査できますが、効率が悪く、一般的な適用厚さは400mmです。
(4)問題のとおりです。床版に荷重を与え、与えた荷重と変形の関係から床版の剛性を調査することができます。

【問233_調査手法】

 鉄筋コンクリート構造物のモニタリングに関する記述のうち、不適当なものはどれか
(1)アコースティックエミッション(AE)を測定して、鉄筋コンクリート桁の累積疲労損傷度を監視する。
(2)自然電位を測定して、鋼材の腐食の可能性を監視する。
(3)パイ型ゲージを利用して鉄筋コンクリート桁のひび割れ幅の変化を監視する。
(4)光ファイバセンサを利用して、鉄筋コンクリート床版のひずみの変化を監視する。
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正解(1)

(1)誤りです。AE法は、新たなひび割れの発生時に発生する弾性波を検出する調査方法です。累積疲労損傷度の監視には適しません。
(2)問題のとおりです。自然電位法は、鉄筋の腐食部の電位がマイナス側に変化することを利用し、鉄筋をプラス(+)、コンクリートをマイナス(-)として電位差を測定することで、鉄筋の腐食推定を行う方法です。
(3)問題のとおりです。パイ型ゲージは、ばね板にひずみゲージを取付けた、シンプルな形状をした変位計です。測定範囲内に発生したコンクリート表面の亀裂変位や構造物の変位など、大きな変形を容易に測定することが可能です。
(4)問題のとおりです。光ファイバセンサは、構造物に設置した光ひずみ計に外力が掛かることにより、光ファイバにひずみや変形が生じ、その変化を測定することで、床版などの面的に広がりのある部材のモニタリングに用いる測定方法です。

【問234_調査手法】

 中性化あるいは塩化物の調査・測定方法に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)ドリル法では、フェノールフタレイン溶液を吸収させた、ろ紙上にドリル削孔粉を落下させ、削孔粉が赤紫色に変色した際のドリル孔の深さから中性化深さを推定する。
(2)示差熱重量分析(DTA-TG)により、水酸化カルシウムの脱水と炭酸カルシウムの脱炭酸による質量減少から両者を定量し、中性化の有無を確認する。
(3)全塩化物の定量において、資料を50℃にあたため、50℃の温水を加えて、30分間振とうして塩化物イオンを抽出する。
(4)質量が等しい塩化ナトリウム(NaCl)と塩化カルシウム(CaCl2)では、塩化物イオン量は塩化ナトリウムの方が小さい(原子量はCl=35.5、Na=23、Ca=40とする)
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正解(3)

(1)問題のとおりです。ドリル法では、フェノールフタレイン溶液を吸収させた、ろ紙上にドリル削孔粉を落下させ、削孔粉が赤紫色に変色した際のドリル孔の深さから中性化深さを推定すします。
(2)問題のとおりです。示差熱重量分析法は、試料を細かく粉砕した後、試料を入れた炉の温度を1000℃まで上昇させた際の、質量の変化と、熱流量の変化から、物質を定量する方法です。水酸化カルシウムは、450℃付近で熱分解され水蒸気となるため、質量の変化と、熱流量の変化が生じます。
(3)誤りです。塩化物イオンには、可溶性塩化物イオンと、固定化された塩化物イオンがあります。可溶性塩化物イオンは、水に溶けやすく、鉄筋の腐食に影響を及ぼします。一方、フリーデル氏塩のように、コンクリート中に固定化された塩化物イオンは、鉄筋の腐食には影響を与えません。可溶性塩化物イオンは、試料を50℃の温水で30分間振とうさせ、採取します。全塩化物イオンの測定は、試料に強酸を加えて30分撹拌した後、加熱煮沸して抽出します。
(4)問題のとおりです。原子量は、NaClが23+35.5=58.5g、CaCl2が40+35.5×2=111gとなります。塩化物イオンはNaClが58.5g中に1mol、CaCl2が111g中に2mol含まれているので、同質量とした場合、NaClの方が塩化物イオン量は小さくなります。

【問235_調査手法】

 コンクリートからの成分溶出に関連する調査・測定項目として、次のうち、最も不適当なものはどれか
(1)コンクリート断面のビッカース硬さの分布
(2)セメントペースト中のCa/Siモル比
(3)骨材の安定性試験における損失質量分率
(4)接触している水の硬度
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正解(3)

(1)問題のとおりです。コンクリートから成分が溶出した部分のビッカース硬さ分布の測定によって、組織の空洞化の程度を検出することができます。
(2)問題のとおりです。コンクリートから、カルシウムシリケート水和物の溶解が始まると、酸化カルシウムが溶出し、Ca/Si比が低下します。溶出による劣化とは、コンクリート中のセメント水和物成分が周囲の水に溶解して硬化体組織が疎となる現象です。主要な水和生成物のうち最も溶解度が大きいのは水酸化カルシウムです。水酸化カルシウムが消費された後に、カルシウムシリケート水和物の溶出が進行します。
(3)誤りです。骨材の安定性試験は、耐凍害性を判断するための試験です。凍害は、骨材に含まれる水が凍結する際に作用する膨張圧により骨材自身が膨張することで起こります。安定性試験では、水が凍結する際の膨張圧を、硫酸ナトリウムの結晶化による結晶圧で与えることで、骨材の耐凍害性を評価します。
(4)問題のとおりです。接触している水の硬度が小さいほど、濃度勾配が大きくなるため、溶出が促進されます。
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