ビールの起源はメソポタミア文明
ビールを製造していた最古の記録は、シュメール人が築いたメソポタミア文明(今から約5000年前)の時代に作られた「モニュマン・ブリュー」という石板に残されています。
メソポタミア文明では、楔形文字(くさびがたもじ、せっけいもじ)とよばれる人類史上最も古い文字の一つとされる文字が使われていました。
モニュマン・ブリューには楔形文字を使って、ビールを製造していた記録が残されています。その記録には大量のビールを造る方法が記載されており、メソポタミア文明では、すでにビールの製造方法が確立されていたと考えられます。
ビール作りが確立されるまでには、試行錯誤が繰り返されていたでしょうから、実際にビールが作られたのは今から約5000年前よりもさらに昔であったことが容易に想像できます。
メソポタミア文明は、チグリス川とユーフラテス川の間の沖積平野※に栄えた、世界最古の文明といわれています。「メソポタミア」はギリシャ語で「複数の川の間」を意味します。
モニュマン・ブリューに残されたビールの作り方
楔形文字で記録されているビールの製造方法は、以下のようなものです
<ビールの製造方法>
- 麦を発芽させ麦芽をつくり、乾燥させてから粉にする
- できた粉からパンを焼く
- パンを砕き、水を加えて混ぜ合わせ、固形物を取り除く
- 残った液体を野生酵母で発酵させ、ビールができあがる
引用元:日本ビール検定公式テキスト(マイナビ)
1.の工程では、麦芽をつくることで、デンプンを糖化させていることがわかります。
2.の工程では、砂糖を多く含んだ甘いパンができたであろうことが想像されます。そのまま食べてもおいしそうです。
ちなみに”最古のパン”はコペンハーゲン大学の考古学研究グループが発見した「Oldest bread」は14,400年前のものだそうです。(ギネス記録による)
もしかすると、パンを保存していた容器に、雨などの水が入って、自然発酵したのがきっかけでビール造りが研究されていったのかもしれません。
エジプト文明でもビールは作られていた
ピラミッドの建造で有名なエジプト文明でもビールが作られていた記録が残っています。早稲田大学の『エジプト学第19号』の報告によると、紀元前3700年頃(今から約5700年前)ビールを醸造し、その容器として土器を焼成していたとされる遺構が発見されています。
つまり、メソポタミア文明の記録よりもさらに昔からビールが作られていた可能性が高いということです。エジプトとメソポタミアは地理的にも近く、ビール作りの情報も伝わっていたと考えられます。
ピラミッドづくりに働いた人に対しては、その報酬としてビールが与えられていたということがわかっていることからも、エジプト文明では、ビールはとても身近な飲み物であったということがわかっています。
パンからビールが作られていた
メソポタミア文明、エジプト文明では、パンを作って、それを発酵させることでビールを造っていました。私たちが普段飲んでいるビールとは全く異なり、ドロドロした飲み物(どちらかというと食べ物に近い)で、ストローで沈殿物を避けながら飲んでいたとされています。
当然、冷蔵庫もなかったですし、炭酸を封入するための技術もなかったですから、味を楽しむというよりは、アルコールで酔うこと自体を目的とした飲み物だったのかもしれません。
もっとも、安全な水を飲むことも簡単ではなかった時代に、イースト菌で発酵させたビールは、他の雑菌の繁殖を抑えることができるため、安全な飲み物であったことは間違いありません。
いつか、当時の製法で作られたビールをのんでみたいです・・・。