【RC梁のせん断強度式まとめ】大野・荒川式-津村式、荒川min式-修正広沢式

 このページでは、RC梁部材の「せん断ひび割れ強度」と「せん断終局強度」について式を示します。梁は、無開孔と有開孔の場合で算定式が異なりますので、それぞれについてまとめます。

設計式の全体像

 まずは、RC梁部材の「せん断ひび割れ強度」と「せん断終局強度」を計算する際の設計式の呼び名と、条件の一覧を以下に示します。
No 式の呼び方 開孔の有無 求める強度 説明
大野・荒川式 開孔なし せん断ひび割れ強度 せん断ひび割れの基本式
津村式 開孔あり ①+開孔の影響
荒川min式 開孔なし せん断終局強度 せん断終局強度の基本式
荒川mean式 ③のcon項×1.25
修正広沢式 開孔あり ③+開孔の影響

①せん断ひび割れ強度Qc(開孔なし)=大野・荒川式

$$Q_{C}=\left(\frac{0.085k_{C}({F}_{C}+500)}{M{/}{(Qd)}+1.7}\right){bj}{ (kgf)}{・・・式①-1}$$

kc:部材せいに対する補正係数(d>40cmのとき、0.72)
Fc:コンクリートの圧縮強度(kgf/cm2)
M/(Qd):シアスパン比
b:部材幅(cm)
j:応力中心距離(=7d/8)(cm)
d:有効せい(cm)

単位系をkgf→N、cm→mm、kc=0.72とすると次の式になります。

$$Q_{C}=\left(\frac{0.0612(\sigma_{b}+49)}{M{/}{(Qd)}+1.7}\right){bj}{ (N)}{・・・式①-2}$$

σb:コンクリート強度(N/mm2)
参考文献:建築物の構造関係技術基準解説書(付録1-3)

②せん断ひび割れ強度Qco(開孔あり)=津村式

$$Q_{C}=\left(\frac{0.085k_{c}({F}_{C}+500)}{M{/}{(Qd)}+1.7}\right)\left(1-1.65\frac{{H}}{{D}}\right){bj}{ (kgf)}{・・・式②-1}$$

D:梁せい(cm)
H:開孔径(cm)

単位系をkgf→N、cm→mm、kc=0.72とすると次の式になります。

$$Q_{C}=\left(\frac{0.0612(\sigma_{b}+49)}{M{/}{(Qd)}+1.7}\right)\left(1-1.65\frac{{H}}{{D}}\right){bj}{ (N)}{・・・式②-2}$$

参考文献:斜めワイヤメッシュで補強した鉄筋コンクリート造有孔梁の多数くり返し水平耐力実験(その7)孔部せん断ひびわれ強度の推定

③せん断終局強度Qsu(開孔なし)=荒川min式

$$Q_{su}=\left(\frac{0.053{{p}_{t}}^{0.23}{(F_{C}+18)}}{M{/}{(Qd)}+0.12}+0.85\sqrt{{P}_{w}\sigma_{wy}}\right){bj}{ (N)}{・・・式③-1}$$

pt:引張鉄筋比(%)
Fc:コンクリートの圧縮強度(N/mm2)
M/Q:M、Qはそれぞれ終局強度算定時における部材内の最大モーメントおよびせん断力(ただし、M/(QD)は、M/(Qd)<1のとき1とし、M/(Qd)>3のとき3とする)
d:はり有効せい(mm)
pw:せん断補強筋比(小数、中子筋を除く場合0.012を上限とする。ただし、せん断補強筋として中子筋を併用する場合やスパイラル筋を用いる場合にはを上限とすることができる。)
σwy:せん断補強筋の降伏強度(N/mm2)
b:はり幅(mm)
j:応力中心間距離で7d/8としてよい(mm)
参考文献:建築物の構造関係技術基準解説書(付録1-3)

参考として、RC基準に示されている式と比較します。

$$Q_{su}=\left(\frac{0.092{ku}{kp}{(\sigma_{b}+180)}}{M{/}{(Qd)}+0.12}+2.7\sqrt{{P}_{w}\sigma_{wy}}\right){bj}{ (kgf)}{・・・式③-2}$$

ここで、単位系を揃えて、Ku→0.72、kp→0.82pt0.23、2.7→2.7/(9.8)1/2とすると、上の式とほぼ同じ形となります。

$$Q_{su}=\left(\frac{0.054{{p}_{t}}^{0.23}{(F_{C}+18)}}{M{/}{(Qd)}+0.12}+0.86\sqrt{{P}_{w}\sigma_{wy}}\right){bj}{ (N)}{・・・式③-2(2)}$$

参考文献:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(15条)

④せん断終局強度Qsu(開孔なし)=荒川mean式

荒川min式(minimum:最小)に対し、荒川mean式(mean:平均)は式③-2(2)の第1項における係数の0.054に1.25を乗じた値となります。これは、せん断終局強度に関する実験結果から逆対称の曲げモーメントを受ける場合のせん断終局強度に合う結果となります。

$$Q_{su}=\left(\frac{0.068{{p}_{t}}^{0.23}{(F_{C}+18)}}{M{/}{(Qd)}+0.12}+0.85\sqrt{{P}_{w}\sigma_{wy}}\right){bj}{ (N)}{・・・式④}$$

参考文献:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(15条)

⑤せん断終局強度Qsuo(開孔あり)=広沢式

$$Q_{suo}=\left(\frac{0.053{{p}_{t}}^{0.23}{(F_{C}+18)}}{M{/}{(Qd)}+0.12}\left(1-1.61\frac{{H}}{{D}}\right)+0.85\sqrt{{P}_{w}\sigma_{wy}}\right){bj}{ (N)}{・・・式⑤}$$

参考文献:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(15条)
 以上、このページでは筆者の備忘録として、鉄筋コンクリート梁のせん断耐力を算定する際の式の名前を一覧にまとめました。何かのお役に立てば幸いです。
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