【過去問演習No.106-110】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.106】

スランプ15cmのコンクリートを公称棒径40mmの棒形振動機を用いて締め固める場合に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)棒形振動機1台につき,コンクリートの締め固め量を1時間当たり60m3として計画した。
(2)棒形振動機の挿入間隔を40cm程度とした。
(3)一層の高さを40~50cmとして打ち込み,締め固めた。
(4)棒形振動機の先端を下層のコンクリート中に10cm程度挿入した。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。通常,コンクリート打設速度は,締め固めに必要な時間によって決定します。コンクリート打設計画において,1時間当り60m3の速度は圧送ポンプ1台あたり最大と見なす値です。また,棒形振動機は圧送ポンプ1台につき3台程度が必要とされます。つまり,締め固め用の棒形振動機1台当り1時間に60m3は明らかに過大です。
(2)○正しい。棒形振動機の効果は棒状振動体の周囲20~30cm程度です。挿入間隔を40cm程度とすれば隙間なく全平面を締め固めることができます。
(3)○正しい。背の高い部材を打設する場合,一度に全部材高さを打設すると側圧が高くなり型枠の変形や破壊を引き起すことがあるほか,打設終了時にブリーディングが大量に発生する等の害もあります。このため一層の高さを制限し,コンクリートが落ち着くのを待って上層のコンクリートを打設すると側圧は高くなりません。
(4)○正しい。下層のコンクリートの凝結が始まるような時間に上層のコンクリートを打設すると,層間に不連続な部分が生じることがあります。棒形振動機を使ってコンクリートを締め固める際,先行した下層のコンクリートの上部を加振し上層のコンクリートと一体化させる方法は効果があります。

【No.107】

コンクリートの運搬に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートポンプによる長距離圧送では,スランプが低下しやすい。
(2)コンクリートバケットによる運搬は,材料分離を起こしやすい。
(3)ベルトコンベアによる場内運搬は,スランプの大きいコンクリートに用いられる。
(4)外気温が高いと,運搬時間を長くしてもよい。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートをコンクリートポンプで長距離圧送すると,管の内面と接する距離が長く,コンクリートが受ける圧力変化の回数が多いてす。そのため,管の曲りによるせん断変形を多数回受ける等々の要因から,スランプが低下しやすいです。
(2)×誤り。コンクリートをバケットによって運搬する方法は,通常は場内運搬に限られます。場内運搬の際はクレーン等を用いる方法が一般的であり,バケットが受ける振動は少なく,コンクリートが受ける振動も少なくなります。このため材料分離を起しにくいです。
(3)×誤り。ベルトコンベアによってスランプの大きいコンクリートを運搬すると,ローラーごとのベルトの上下動により材料分離を生じやすく,傾斜をつけて運搬する場合は,それが助長されます。また,複数のベルトコンベアを繋いで使用する際の乗り継ぎにより材料分離を生じやすいです。このため,ベルトコンベアによる運搬はスランプの小さなコンクリートに限って使用されます。また,固練のコンクリートであっても,前記乗り継ぎを行う場合,当て板等を用いて分離を防ぐことが必要です。
(4)×誤り。化学反応一般にいえることですが,温度が高いと低い場合に比べて反応は速くなります。外気温が高く,コンクリート温度が高いときは,コンクリートの凝結が速くなるので,コンクリートの製造から打ち込みまでの時間を短くしなければなりません。つまり,運搬時間を短くしなくてはなりません。

【No.108】

コンクリートの締め固めに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)層状に打ち込む場合は,締め固めは各層ごとに行い,棒形振動機を下層のコンクリート中に10cm程度挿入するのがよい。
(2)棒形振動機は,跡が残らないよう徐々に引き抜くのがよい。
(3)棒形振動機の締め固め効果は,用いる振動機の振動数が小さいほど大きい。
(4)丸細竹,割竹などの突き棒でかぶりコンクリートを補助的に突き固める方法は,軟練りコンクリートでは有効である。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートを層状に打ち込む場合,下部のコンクリートに新たなコンクリートを重ねることになります。この際,締め固めは各層ごとに行わなければなりません。かつ,下部のコンクリートと新たに上に重ねたコンクリートの状態は異なります。このため,上下のコンクリートの境界を棒形振動機を下層のコンクリート中に10cm程度挿入して一体化するのがよいです。
(2)○正しい。棒形振動機によって固練りコンクリートの締め固めを行う場合,振動機を素早く引き抜くと振動機の跡が穴として残り,後にセメントペーストあるいはブリーデイング水により埋められてしまうことになります。振動機の後が残らないよう徐々に引き抜かなければなりません。
(3)×誤り。棒形振動機によって締め固める場合,振動する部分からコンクリートに伝わるエネルギーが大きいほど効果は大きくなります。振動機の振動部分の重量や容積(径)が同じであれば,振動数が大きいほど効果は大きくなります。
(4)○正しい。丸細竹,割竹などの突き棒は固練りコンクリートでは使用することはできません。しかし,軟練りコンクリートでは,かぶりコンクリートを補助的に突き固める方法として有効であり,小さな空気,あばた等を減らす効果は高いです。

【No.109】

現場内でのコンクリートの運搬に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)スクイーズ式コンクリートポンプは,ピストン式コンクリートポンプに比べて,長距離の圧送に適している。
(2)ベルトコンベヤは,硬練りコンクリートを短距離で水平に連続して運搬するのに適している。
(3)コンクリートバケットをクレーンで運搬する方法は,材料分離を起こしにくい利点がある。
(4)斜めシュートは,材料分離を起こしやすいので,できるだけ使用しない方がよい。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。コンクリートポンプによる圧送の基本的知識を問うものです。スクイーズ式とはsqueeze(英語:絞り出す)の意味のとおり,コンクリートを充填したチューブを押し潰しながらコンクリートを前に送る。したがって,連続してコンクリートを圧送することができますが,コンクリートの変形に要するエネルギーが多くなり,前方に送るエネルギーのロスとなります。これに対してピストン式は,シリンダー内のコンクリートを後方から前方へ直接ピストンで押す機構のため,エネルギーのロスが少なく,ピストン切替えの際脈動を生じる欠点はあるものの,前方へ送るエネルギーを得やすく長距離圧送に適しています。
(2)○正しい。ベルトコンベヤは,もともと個体,粒体,粉体等を運搬するのに適したものです。コンクリートのようなスラリーを運搬する場合,振動によって分離しやすいです。このため,ベルトコンベヤの利用は硬練りコンクリートに限られます。また,傾斜したコンべヤ上では分離の可能性が高まる。
(3)○正しい。コンクリートバケットをクレーンで運搬する方法は,振動が少なくかつ打設箇所に直接運搬することができるため,材料分離を起しにくいです。
(4)○正しい。斜めシュートは材料分離を生じやすいので,傾斜は1/2以下で全長を一様にし。長距離になる場合は速度を落とし,吐出口には当て板をつけ,自由落下高は1.5m以下とするなどの対策が必要です。

【No.110】

コンクリートの運搬に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)気温が高い時期に運搬時間が長くなると,スランプの低下が生じやすい。
(2)荷卸しする前に,トラックアジテータ内のコンクリートを高速かくはんすると,材料分離が起こりやすい。
(3)コンクリートの圧送距離が長いと,圧送負荷は大きくなる。
(4)コンクリートの圧送に用いる輸送管の径が大きいと,管内圧力損失は小さくなる。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートのスランプロスの原因は,セメントの水和反応が除々に進むことによって生じます。化学反応は一般に高温になるほど反応は速くなります。これが高温のときスランプの低下が生じやすい要因です。
(2)×誤り。コンクリートを運搬する際,トラックアジテータはドラムを低速で回転させ,材料分離を防止しています。しかし低速回転であるため,ドラム内のコンクリートが一様にかくはんされているか否か疑わしい場合があります。このため荷卸し直前に,再度ドラムを高速で回転しかくはんすることは有効です。
(3)○正しい。コンクリートを圧送する際にコンクリート圧送機械にかかる負荷は,まず第一に送らなければならないコンクリートの量に比例します。したがって,圧送距離が長いほど,圧送高さが高いほど,その負荷は大きくなります。
(4)○正しい。同一量のコンクリートを圧送する際の負荷は,コンクリートが受ける変形や輸送管内面との摩擦により大きくなります。管径が大きくなると,内部のコンクリート量に対する管内面との接触面積は,管径が小さい場合に比べ小さくなり,摩擦の影響は相対的に低下し,圧力損失は小さくなります。
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