【過去問演習No.71-75】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.71】

アルカリシリカ反応(ASR)に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)飛来塩分などでもたらされる塩化ナトリウムは,ASRによるコンクリートの膨張に影響を及ぼす。
(2)モルタルバー法は細骨材用の反応性試験方法であり,化学法は粗骨材用の反応性試験方法である。
(3)ASRによるコンクリートの膨張量は,反応性骨材が多いほど大きくなる。
(4)ASRによるコンクリートの損傷は,外部から水が供給されないマッシブな構造物では生じない。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。水酸化アルカリの供給源は,セメント,混和剤,骨材(海砂に付着した塩化物)などの他に,硬化後に外部から浸入する塩化物(NaClなど)もあります。
(2)×誤り。骨材のアルカリに対する潜在的な反応性を調べる方法として,化学法;JIS A 1145-2007(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(化学法))とモルタルバー法;JIS A 1146-2007(骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法))があり,両試験とも細骨材および粗骨材に適用することができます。
(3)×誤り。ASRによる膨張は反応性骨材の量が多いほど大きくなるわけではなく,ペシマム量(ASRによる膨張がもっとも大きくなるときの骨材中に含まれる反応性骨材の割合)のときにもっとも大きくなります。
(4)×誤り。外部から水が供給されないマッシブな構造物の場合,大気に直接触れる表層付近では乾燥によりコンクリート中の水分が蒸発しますが,中心部のコンクリートの水分はほとんど蒸発しません。つまり,構造物の中心部ではアルカリシリカ反応に必要な水分が存在することになります。

【No.72】

コンクリート構造物の劣化と耐久性に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)鉄筋腐食は,コンクリートのかぶり(厚さ)が小さい方が生じにくい。
(2)コンクリートは,乾燥状態にあるより湿潤状態にある方が,中性化しやすい。
(3)コンクリートは,乾燥状態にあるより湿潤状態にある方が,凍害を受けやすい。
(4)塩化物イオンの拡散係数は,コンクリートの水セメント比が大きい方が小さい。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。コンクリート中の鉄筋が腐食するためには酸素と水が必要です。本間のように,かぶり(厚さ)が小さいと,コンクリート表面から浸透する水もしくは大気中から拡散する酸素が鉄筋の周囲にまで容易に到達しやすくなるため,鉄筋腐食は生じやすくなります。
(2)×誤り。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した二酸化炭素が細孔溶液中に溶解して炭酸イオン等に変化し,溶解したイオンとコンクリートの水和生成物が反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。一般に,湿潤状態より,乾燥状態であるコンクリートの方が二酸化炭素の侵入が容易なため,中性化の進行は速くなります。ただし,著しく乾燥した場合,炭酸化反応に必要な水分が少ないため,逆に中性化しにくくなります。
(3)○正しい。凍害とは,コンクリートの細孔中にある水分が凍結膨張(体積膨張率が約9%)し,その際に発生する圧力によりコンクリート組織を破壊する現象で,長年にわたる凍結と融解の繰返し作用によって徐々にコンクリートが劣化する現象です。つまり,凍結する水分が多く含まれるコンクリートほど(湿潤状態であるほど),凍害は生じやすくなります。
(4)×誤り。塩化物イオンの拡散係数とは,塩化物イオンのコンクリート中への拡散のしやすさを示すものであり,拡散係数が大きいほどコンクリート内部深くまで拡散しやすいことを表しています。水セメント比が小さいほどコンクリートの組織は緻密になるため,塩化物イオンなどの物質は拡散しにくくなり,拡散係数は小さくなります。

【No.73】

コンクリートの耐久性に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)同一空気量のコンクリートでは,気泡間隔係数を大きくすることにより,耐凍害性が向上する。
(2)AEコンクリートでは,水セメント比を小さくすることにより,耐凍害性が向上する。
(3)普通ポルトランドセメントの一部をフライアッシュに置換することにより,海水による化学的腐食に対する抵抗性が向上する。
(4)水セメント比が小さいコンクリートを使用し,入念な締め固めと養生を行うことにより,海水による浸食作用に対する抵抗性が向上する。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。練り混ぜ中にコンクリート中に入る空気はエントラップトエアと呼ばれており,その空気泡の径は100μm程度以上,気泡間隔係数は400~700μm程度であり,耐凍害性に有効ではありません。一方,AE剤,AE減水剤,などにより計画的にコンクリート中に混入した空気はエントレインドエアと呼ばれており,その空気泡の径は100μm程度以下が多く,気泡間隔係数は150~200μm程度であり,耐凍害性の向上に有効です。
(2)○正しい。AEコンクリートで気泡の特性が同一の場合には,水セメント比の小さい緻密な組織であるほど耐凍害性は向上します。
(3)○正しい。海水の成分でコンクリートに有害な化学物質は硫酸マグネシウム(MgSO4S)と塩化マグネシウム(MgCl)であり,いずれの塩類もセメント水和物である水酸化カルシウムCa(OH)2と反応して,前者は体積膨脹をおこし,後者は組織を多孔質にしてコンクリートを劣化させます。セメントの一部をフライアッシュで置換すると水酸化カルシウムCa(OH)2の生成量が減少するために,海水に対する化学的腐食に対する抵抗性が向上します。
(4)○正しい。強度および水密性が高いコンクリートを入念に施工することは,海水による浸食作用に対する抵抗性の強いコンクリートが得られます。

【No.74】

塩害環境下のコンクリート構造物の耐久性に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)鉄筋の腐食を抑制するために,セメントの種類を高炉セメントB種から普通ポルトランセメントに変更した。
(2)コンクリート中への塩化物イオンの浸透を抑制するために,コンクリートの水セメント比を小さくした。
(3)鉄筋の腐食を抑制するために,コンクリートのかぶり(厚さ)を増した。
(4)コンクリート中への塩化物イオンの浸透を抑制するために,合成樹脂材料による表面被覆を施した。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。高炉セメントB種は,普通ポルトランドセメントに比較して,塩化物イオンの固定化能力が高く,耐海水性にも優れているため,鋼材の腐食防止という面で非常に有効なセメントです。
(2)○正しい。水セメント比が小さいコンクリートほど塩化物イオンの浸透は抑制されるため,塩害に対する抵抗性が向上します。
(3)○正しい。コンクリート表面から塩化物イオンが浸透するので,かぶり(厚さ)が大きければ大きいほど,鋼材は腐食しにくくなります。
(4)○正しい。合成樹脂材料による表面のライニング,塗装等の被覆は,外部からの塩化物イオンの浸透の防止に有効です。

【No.75】

コンクリートの耐久性に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートの耐凍害性は,コンクリートが凍結状態を長時間継続した後の動弾性係数の保持率によって評価する。
(2)鉄筋の腐食を抑制するために,コンクリート中の塩化物イオン量の上限を0.2kg/m3とした。
(3)アルカリシリカ反応によるコンクリートのひび割れは,鉄筋の有無にかかわらず亀甲状に生じる。
(4)アルカリシリカ反応による膨張量が最も大きくなるときの骨材中に含まれている反応性骨材の割合はペシマム量と呼ばれ,コンクリート中のアルカリ量,骨材の種類および粒度などによって変化する。
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正解は(2)と(4)

【解説】
(1)×誤り。コンクリート耐凍害性は,JIS A 1148-2010(コンクリートの凍結融解試験方法)に基づき,相対動弾性係数や質量減少率で評価します。材齢14日まで標準養生した10×10×40cmの角柱供試体を+5~-18℃の温度サイクルを3~4時間で300サイクルまで繰返し作用させます。この間,共鳴振動による動弾性係数および質量変化を計測し,試験開始前からの相対動弾性係数や質量減少の保持率によって耐凍害性を評価します。
(2)○正しい。塩化物イオンがコンクリート中に供給される経路には,練り混ぜ時に使用材料から供給される場合(とくに海砂を用いた場合)と,構造物の環境により外部から浸透される場合の2つがあります。前者の経路に対して,土木学会示方書JASS5,JIS A 5308-2009(レディーミクストコンクリート)では,塩化物イオン総量が0.3kg/m3以下であれば構造物の所要の性能は失われないとしています。一方,後者に対しては,土木学会示方書では,構造物の設計供用期間内に鋼材位置でのコンクリート中の塩化物イオン濃度が鋼材腐食発生限界濃度(1.2kg/m3)に達しなければよいとしています。本間のように,コンクリート中の塩化物イオン量の上限を0.2kg/m3としておけば,鋼材腐食の抑制効果は十分に得られます。
(3)×誤り。アルカリシリカ反応が進行すると,コンクリート表面にはひび割れ,ゲルの滲出などが確認され,そのひび割れパターンはコンクリートの拘束状態により異なります。たとえば,拘束の小さい無筋コンクリートでは亀甲状のひび割れがみられ,鉄筋コンクリート。プレストレストコンクリート構造物のように,鉄筋やPC鋼材がASR膨張を拘束する働きをする場合には,鉄筋やPC鋼材の軸方向に沿うひび割れがみられるようになります。
(4)○正しい。アルカリシリカ反応による膨張は,コンクリート中の反応性骨材の量が多いほど大きくなるとは限らず,膨張量が最大になる骨材中の反応性骨材の割合が存在します。これをペシマム量と呼びます。ペシマム量が存在する理由は,反応性骨材の量が一定量を超えると,反応性骨材量の増加に伴う反応性シリカの表面積が増大し,モルタル中のアルカリが低減してシリカを解離する反応が活発でなくなるためです。つまり,ペシマム量はコンクリート中のアルカリ量,骨材の種類や粒度などに影響されます。
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