【過去問演習No.111-115】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.111】

コンクリート棒形振動機の使用に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートの上下の層が一体となるように,棒形振動機を下層のコンクリート中に10cm程度挿入した。
(2)コンクリートに棒形振動機の挿入跡が残らないように,棒形振動機をゆっくりと引き抜いた。
(3)配筋を乱さないように,棒形振動機が鉄筋になるべく触れないようにした。
(4)フレキシブルホースの筒先を固定して,コンクリートを棒形振動機で水平方向に横流ししながら打ち込んだ。
クリックで【No.111】の解答と解説をみる

正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートを同一打設日に複数回に分けて打設する際,事前に打ち込まれたコンクリートに新たなコンクリートを接触させ打設することを,打重ねということがあります。打重ねを行う際,とくに気温が高い場合,事前に打ち込まれたコンクリートぱこわばり”が生じ始めていることがあり,先に打ち込まれたコンクリート内に振動機を挿入し,新たに打重ねるコンクリートと一体化させることは有効です。
(2)○正しい。コンクリートを棒形振動機で締め固める際,棒形振動機を素早く引抜くと振動機の挿入跡が残る。この挿人跡はそのまま残れば空洞であるし,仮に充填された場合でも,コンクリート中のペーストないしは軟らかいモルタル成分です。このため,ゆっくりと加振しながら引抜き,挿入跡をコンクリートで充填しなければなりません。
(3)○正しい。棒形振動機を用いてコンクリートを締め固める際,棒形振動機が鉄筋に触れると鉄筋が動いて配筋が乱れます。また鉄筋が振動するため,鉄筋の周囲にコンクリート中の軟らかい成分が集まり脆弱層を形成するおそれもあります。このため,棒形振動機を鉄筋に接触させてはなりません。
(4)×誤り。コンクリートに振動を加えるのは,コンクリートを流動化させ,型枠内に充填するために行うものです。型枠内でコンクリートを水平移動させると,鉄筋,鉄骨などコンクリートの移動を阻害するものによってコンクリートが分離するおそれが生じます。また逆に,コンクリートの移動によって鉄筋などを変形させることもあり,棒形振動機によりコンクリートを水平移動させてはなりません。

【No.112】

コンクリートのポンプ圧送に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)単位セメント量が少ないコンクリートでは,配管内の閉塞が生じやすい。
(2)スランプの小さいコンクリートには,スクイーズ式よりピストン式が適している。
(3)軽量骨材コンクリートでは,骨材に事前吸水を行なうことで配管内の閉塞が生じにくくなる。
(4)高流動コンクリートでは,普通コンクリートより圧力損失が小さい。
クリックで【No.112】の解答と解説をみる

正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。セメント(微粉末)量の少ないコンクリートは,セメントペーストの粘性が低いため圧力を受けた際コンクリート中の水が分離しやすいです。水が分離して硬くなったコンクリートは圧送管内で閉塞しやすいです。
(2)○正しい。mスランプの小さいコンクリートは変形に要するせん断力が大きいです。チューブ内のコンクリートにせん断力を加えながら押し出す形式のスクイーズ式ポンプよりも,シリンダー内のコンクリートを直接押し出すピストン式ポンプの方が適しています。
(3)○正しい。軽量コンクリートが圧力を受けると,軽量骨材の内部に多く存在する空隙にコンクリート中の水が侵入し,結果的に単位水量の少ないコンクリートと同様の性状を示します。したがって,あらかじめ吸水させ軽量骨材内の空隙を水で満たして圧力を受けても水が侵入しない対策は効果があります。
(4)×誤り。高流動コンクリートは普通コンクリートに比べ変形に要するせん断力は小さいが,粘性が極端に高く,変形するのに長い時間を要します。このため,圧送管内での変形に時間を要するため,普通コンクリートと同程度の速度で圧送するには多大のエネルギーを要します。このため,圧力損失は大きくなります。

【No.113】

コンクリートの打ち継ぎ部の施工計画に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)水密性が要求される部材であったので,打ち継ぎ目に止水板を設置する計画とした。
(2)はりおよび床の打ち継ぎ目を,スパンの端部に設けるよう計画した。
(3)打ち継ぎ面を,圧縮力の作用方向と直角に設けるよう計画した。
(4)打ち継ぎ面のレイタンスを除去した後に,コンクリートを打ち継ぐ計画とした。
クリックで【No.113】の解答と解説をみる

正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。打ち継ぎ部はコンクリートを一体化させるのが難しく,水道となりやすい欠点があります。水密を要する部分に打ち継ぎを設けるのは原則として避けるべきですが,やむをえず設ける場合,止水板,止水剤などを用います。
(2)×誤り。打ち継ぎはせん断力が小さい部分に設けるのが原則です。はりや床では,スパンの中央部分に設け,スパンの端部からスパンの1/4以内の部分には通常打ち継ぎは設けません。
(3)○正しい。打ち継ぎを設ける場合,打ち継ぎ面には極力せん断力が作用しないようにするのが鉄則です。圧縮力を受ける部分に圧縮力の作用方向に直角に打ち継ぎを設けると,打ち継ぎ部にせん断力は作用しません。
(4)○正しい。打ち継ぎ面にレイタンス等の脆弱層があると,打ち継いだコンクリートとの接着が阻害され,打ち継ぎ面に平行なせん断力に耐えられないばかりでなく,圧縮力にも耐えられない可能性があります。レイタンス等の脆弱層は取り除かなければなりません。

【No.114】

コンクリートのポンプ圧送に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)下向きの配管によるポンプ圧送は,上向きの配管に比べて容易で,閉塞することは少ない。
(2)高強度コンクリートのポンプ圧送には,ピストン式よりスクイーズ式のほうが適している。
(3)単位セメント量が少なくなると,輸送管内の閉塞が生じやすい。
(4)径の小さい輸送管を使用し,ベンド管を多くすると,圧送負荷が小さくなる。
クリックで【No.114】の解答と解説をみる

正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。ポンプにより下向きの配管で圧送する場合,コンクリートが自重により落下し,先走りしたコンクリートの上面に低圧の部分が生じ分離の原因となることがあります。このため,自重による落下防止あるいは低圧とならないような給気の対策が必要となります。コンクリートを上向きに圧送する配管では,まったく考慮の必要がない対策です。
(2)×誤り。高強度コンクリートは粘性が高く変形に大きなエネルギーが必要であり,圧送にはスクイーズ式よりエネルギーの大きいピストン式のほうが適しています。
(3)○正しい。単位セメント量が少なくなると,セメントペーストあるいはモルタルの粘性が低くなり,粗骨材とモルタルあるいはセメントペーストと骨材の分離が生じやすいです。これらの分離は,輸送管内の閉塞に繋がる。
(4)×誤り。コンクリートを圧送する際の抵抗すなわち圧送負荷は,コンクリートと圧送管内面との摩擦,コンクリートの変形に要するエネルギー,コンクリートを上方にもち上げるためのエネルギーの3項目です。径の小さい輸送管を使用し,ベンド管を多くすると,これら3項目中の2項目が大きくなり,圧送負荷が大きくなります。

【No.115】

コンクリートの打ち込み・締め固めの施工計画に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートを2層に分けて打ち込む場合に,外気温か25℃と予想されたので下層と上層の打重ね時間間隔が2時間以内とする計画とした。
(2)コンクリートを20m下向きに打ち込む場合に,自由落下しにくいように工夫した縦シュートを用いる計画とした。
(3)柱とはりにコンクリートを打ち込む場合に,一体化させるために連続して一度に打ち込む計画とした。
(4)厚い壁に打ち込むコンクリート締め固めに,型枠振動機に代えて棒形振動機を用いる計画とした。
クリックで【No.115】の解答と解説をみる

正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートを2層に分けて打ち込む場合,打重ね時間間隔が長くなると上下の2層が一体化しなくなることがあります。外気温か高くなると,コンクリートの凝結が速くなり打重ね部分を一体化するための時間間隔の限度は短くなります。JASS5では,30℃をこえる場合1時間30分以内,30℃未満の場合2時間と決められています。
(2)○正しい。コンクリートを下向きに打ち込む場合,ある高さを自由落下させたり,斜めジュートのように斜面をコンクリートがすべるような機器を用いると,重力の作用によりコンクリート中の材料の単位容積質量差によって分離が生じることが多いです。このため,コンクリートの自由落下を妨げるように工夫された機器が考案され実用化されています。
(3)×誤り。コンクリートは型枠内に打ち込まれて静止すると,ブリーディングによりコンクリート表面が沈下します。柱壁などとはり床等,打ち上げ高さに極端な差がある場合,一度に連続してコンクリートを打ち込むと,コンクリートの沈下量に差があるため,コンクリート上面に段差が生じ,この段差がひび割れとなります。このため,柱壁などははり床の下端の高さまで打ち上げた後沈下の落ち着きを待って,はり床のコンクリートを打設するのがよいです。
(4)○正しい。厚い壁や基礎フーチングなど大きな断面にコンクリートを打ち込む場合,脱型後内部の欠陥を発見できません。このため,十分に締め固めを行う必要がありますが,型枠振動機は型枠に近接したコンクリートに振動を加え締め固める機器であり,断面の大きな部材の内部を締め固めることはできません。棒形振動機を断面内部に挿入して締め固めなければなりません。
タイトルとURLをコピーしました