【過去問演習(3)No.46-50_性質】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.46】

コンクリートの力学特性に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)圧縮強度が高くなると,圧縮強度に対する引張強度の比は大きくなる。
(2)圧縮強度が高くなると,同一応力におけるクリープひずみは小さくなる。
(3)圧縮強度が高くなると,鉄筋との付着強度は高くなる。
(4)圧縮強度が高くなると,静弾性係数は大きくなる。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。引張強度と圧縮強度の比率(引張強度/圧縮強度)は一般に1/10~1/13ですが,圧縮強度が高くなるとその比率は小さくなります。
(2)○正しい。圧縮強度が高くなるほどコンクリートの組織は密な状態となり,持続荷重が作用した場合の変形量(クリープひずみ)は小さくなります。
(3)○正しい。建設工事で一般に使用されている鉄筋のほとんどは,表面にリブをもつ異形鉄筋であり,鉄筋とコンクリートとの付着強度はこのリブ面のコンクリートの局部圧縮力の大小におおむね比例します。
(4)○正しい。コンクリートの静弾性係数(ヤング係数)と圧縮強度との関係は,圧縮強度の増大に伴って静弾性係数も緩やかに増大します。ただし,圧縮強度の増加に伴う静弾性係数の増加の割合は圧縮強度の増加に伴って小さくなります。

【No.47】

硬化コンクリートの体積変化に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)乾燥収縮ひずみは,コンクリート部材の断面寸法が大きいほど小さくなる。
(2)乾燥収縮ひずみは,骨材の弾性係数が大きいほど大きくなる。
(3)熱膨張係数(線膨張係数)は,骨材の岩種により異なり,石灰岩を用いると硬質砂岩を用いた場合に比べて小さくなる。
(4)熱膨張係数(線膨張係数)は,水セメント比にほとんど影響されない。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートやモルタルの乾燥収縮は,これらの中の水分が蒸発してセメントペースト等の組織が収縮する現象です。断面寸法の大きい部材は,単位容積当りの表面積の割合が小さいため,断面寸法の小さい部材よりも水分の蒸発する量は少なくなります。そのため,乾燥収縮ひずみも小さくなります。。
(2)×誤り。(2)コンクリートの乾燥収縮ひずみは,弾性係数の大きい骨材を使用したコンクリートほど小さくなります。
(3)○正しい。コンクリートの熱膨張は使用骨材の岩質にもっとも影響を受けます。石英を含む花崗岩や砂岩系の骨材は575℃で膨張が急増し組織が崩壊します。次いで石灰岩系の骨材が750℃以上で分解が始まります。熱膨張を抑え耐熱性を向上させるためには,安山岩などの火山岩系の骨材や高炉スラグ骨材などの熱膨張係数の比較的小さい骨材を使用することが有効です。
(4)○正しい。コンクリートの熱膨張係数は,圧縮強度やヤング係数などの強度特性と異なり,水セメント比や材齢による影響は受けにくいです。

【No.48】

蟆イ匕コンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)水密性は,粗骨材の最大寸法が大きいほど低下する。
(2)耐火性は,石灰質骨材を用いると向上する。
(3)単位容積質量の大きいコンクリートは,X線に対する遮へい効果が大きい。
(4)気泡コンクリートの単位容積質量は1.0t/m3より小さい。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。粗骨材の最大寸法が大きくなると骨材の下面の水隙が大きくなり,水の通り道ができやすくなります。このようなコンクリートは水密性が低く,透水係数が大きいです。
(2)×誤り。石英を含む花崗岩や砂岩系の骨材は575℃で膨張が急増し組織が崩壊します。次いで石灰岩系の骨材が750℃以上で分解が始まります。熱膨張を抑え耐熱性を向上させるためには,安山岩などの火山岩系の骨材や高炉スラグ骨材などの熱膨張係数の比較的小さい骨材を使用することが有効です。
(3)○正しい。原子力発電所施設や放射線関係の医療施設等では,人体に有害なX線やガンマ線,中性子線を遮蔽する目的で遮蔽用コンクリートが使用されます。X線等に対する遮蔽性能は,遮蔽物の密度と部材厚さの積にほぼ比例して向上するため,磁鉄鉱や砂鉄等の重量骨材を用いて単位容積質量を大きくした重量コンクリートが用いられます。
(4)○正しい。気泡コンクリートは,気泡の製造方法によってプレフォーム法,ミックスフォーム法,アフターフォーム法の3つに分類され,トンネルの裏込め充填材やALCなどのプレキャスト製品に使用されます。ALCの密度は0.5g/cm3程度です。

【No.49】

コンクリートの力学的性質に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)静的圧縮試験によって得られる割線弾性係数は,共鳴振動によって得られる動弾性係数よりも小さい。
(2)長期材齢における圧縮強度は,初期の養生温度が50℃の場合の方が20℃の場合よりも小さい。
(3)圧縮強度の試験値は,一辺が100mmの立方体供試体を用いた場合の方が,直径が100mmで高さが200mmの円柱供試体を用いた場合よりも小さい。
(4)曲げ強度の試験値は,3等分点載荷の曲げ試験より得られる値の方が,中央点載荷の曲げ試験より得られる値よりも小さい。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートの静弾性係数は,圧縮強度試験から得られた応力度をひずみ度で除して求めた弾性係数です。通常,試験開始点とコンクリートの破壊荷重の1/3点を結んだ割線弾性係数を静弾性係数と表しています。一方,動弾性係数は,コンクリートを弾性体と仮定し,その縦共振振動数や伝播速度を測定して理論的に求めた弾性係数です。静弾性係数と動弾性係数を比較した場合,荷重を加えながら求めた実験値である静弾性係数の方が小さいです。
(2)○正しい。材齢初期の養生温度が約50℃までの範囲では,養生温度が高いほど材齢28日までの圧縮強度は大きくなります。しかし,材齢初期に養生温度が高いと長期材齢での水和を妨げるような水和物が生成されるため,材齢経過に伴う強度増進が小さくなります。
(3)×誤り。供試体の形状や寸法はコンクリートの破壊性状に大きな影響を及ぼします。一般的には,供試体の直径に対する高さの比が大きいほど見掛けの圧縮強度は小さくなります。供試体の形状,寸法による見掛けの圧縮強度の比率は,たとえば一辺15cmの立方体供試体を用いた見掛けの圧縮強度と,直径15cm,高さ30cmの円柱供試体を用いた見掛けの圧縮強度との比は,材齢28日の時はおよそ1.16対1となり,立方体供試体の方が見掛けの圧縮強度は大きくなります。なお,材齢が経過して圧縮強度が大きくなり1年の時にはおよそ1.12対1となり,その比率は1に近づきます。
(4)○正しい。コンクリートの曲げ試験は,JISA1132ー2014(コンクリートの強度試験用供試体の作り方)によって作製された,断面が正方形の角柱供試体を用い,JISA1106ー2006(コンクリートの曲げ強度試験方法)によって定められた3等分点載荷による方法が一般的ですが,その他に中央点載荷による方法があります。この時に求まる曲げ強度は,3等分点載荷の方が中央点載荷よりも小さくなります。これは,中央点載荷の場合には曲げモーメントが最大となるのが1断面しかないのに対し,3等分点載荷の場合には載荷点間の部分がすべて同一曲げモーメントとなり,その間でもっとも弱い断面で破壊するからです。

【No.50】

コンクリートのひび割れの抑制に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)沈降に伴うひび割れの抑制には,単位水量を少なくして,コンクリートを十分に締め固めることが有効である。
(2)打ち込み後の急速な乾燥に伴うひび割れの抑制には,膜養生を行うことが有効である。
(3)自己収縮によるひび割れの抑制には,水セメント比を小さくすることが有効である。
(4)乾燥収縮によるひび割れの抑制には,単位水量を少なくして,十分な湿潤養生を行うことが有効である。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。ブリーディングに伴うコンクリート表層部の沈降が鉄筋などによって拘束されると,鉄筋上面に沿ってひび割れが発生します。これを抑制するためには,単位水量を少なくし,コンクリートを十分に締め固め,ブリーディング量を小さくすることが有効です。
(2)○正しい。材齢初期に発生する有害なひび割れ等の初期欠陥を生じさせないようにし,強度や耐久性等の所要の性能を確保するためには,打設後の一定期間は適切な温度および湿度が保持できるよう十分な湿潤養生が必要です。湿潤養生の方法としては,型伜の保持期間を十分に取るとともに散水養生,養生マットや水密シートなどによる被覆,膜養生があります。
(3)×誤り。自己収縮とは,セメントにより凝結始発以降に発生する巨視的な体積の減少をいいます。自己収縮におよぼす配・調合の要因として,結合材量,水結合材比,化学混和剤の種類や添加率などが挙げられ,高流動コンクリートや高強度コンクリート,マスコンクリートなどの結合材量が多く,水結合材比の小さいコンクリートを使用する場合は考慮する必要があります。
(4)○正しい。乾燥収縮は,単位水量や単位セメント量が大きいほど,骨材の弾性係数が小さいほど,大きくなる傾向にあります。よって,乾燥収縮に起因するひび割れを抑制するには,単位水量や単位セメント量の小さいコンクリートを使用し,硬化初期の十分な湿潤養生が有効です。
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