【No.56】
コンクリートの熱的性質に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)コンクリートの線膨張係数は,骨材の種類および単位量による影響を受けやすい。
(2)高温加熱を受けたコンクリートでは,圧縮強度よりも静弾性係数の方が,低下の割合が著しい。
(3)コンクリートの静弾性係数は500°Cに加熱された後に冷却されて常温になった時点では,加熱前の値の10~20%程度になる。
(4)同一水セメント比のコンクリートの場合,含水率の低い方が,急激な加熱によって爆裂しやすい。
クリックで【No.56】の解答と解説をみる
正解は(4)
【解説】
(1)○正しい。コンクリートの耐熱性にもっとも影響を及ぼす要因は,火害温度の最高到達時間で,次いで使用骨材の岩種です。石英を含む花崗岩や砂岩系の骨材は575℃で膨張が急増し組織が崩壊します。次いで石灰岩系の骨材が750℃以上で分解が始まります。耐熱性を向上させるためには,安山岩などの火山岩系の骨材や高炉スラグ骨材などの熱膨張係数の比較的小さい骨材を使用することが有効です。また,約500°Cで圧縮強度は常温時の60%以下まで低下します。これは,主としてセメントペースト中の水和化合物の結合水の脱水や水酸化カルシウムなどの水和物の分解が原因です。
(2)○正しい。コンクリートは高温にさらされると,骨材とセメントペーストとの熱膨張係数の差によって組織構造にひずみが出たり,ペースト中の水和化合物の結合水の脱水や永酸化カルシウムなどの水和物の分解,骨材の崩壊等が生じ,圧縮強度よりも弾性係数の方が低下が著しいです。
(3)○正しい。火災などでコンクリートが高温にさらされると弾性係数は圧縮強度以上に低下し,約500°Cで常温の10~20%程度まで低下します。なお,火害温度が500°C程度までであれば再度養生することによって,低下しか強度や弾性係数は自癒作用によって徐々に回復します。
(4)×誤り。吸水率の小さい軽量骨材を十分含水させた状態で使用した場合や,コンクリートの組織が緻密で水蒸気の移動や蒸発が起りにくい,低水セメント比の高強度コンクリートの場合には爆裂を生じる可能性が高くなります。
【No.57】
硬化コンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)コンクリートのクリープひずみは,水セメント比が同じ場合,セメントペーストの量が多いほど大きい。
(2)コンクリートの透水係数は,一般に粗骨材の最大寸法が大きいほど大きい。
(3)コンクリートの圧縮強度が高くなるほど,引張強度の圧縮強度に対する比(引張強度/圧縮強度)は小さくなる。
(4)骨材の弾性係数が小さいほど,コンクリートの乾燥収縮ひずみが小さくなる。
クリックで【No.57】の解答と解説をみる
正解は(4)
【解説】
(1)○正しい。クリープとは,コンクリートに荷重が持続的に作用した場合に時間の経過とともにひずみが増大する現象をいいます。弾性ひずみに対するクリープひずみの比率をクリープ係数といいます。コンクリートは骨材(細骨材および粗骨材)とセメントペーストによって構成されています。骨材と比較してセメントペーストはクリープが大きいため,セメントペースト量が多くなるほどコンクリートのクリープは大きくなります。
(2)○正しい。コンクリートの水密性に関する基本問題です。コンクリートの水密性に影響を及ぼす要因としては,施工による要因とコンクリートの物性による要因の2種類があります。施工による要因としては,材料分離やひび割れなど施工欠陥によるものがあります。その他,使用材料の種類,水セメント比,粗骨材の最大寸法,養生方法などがあります。水密性を評価する指標としては次の透水係数があり,この数値が大きくなると水密性が低下します。
(3)○正しい。一般的な圧縮強度の範囲では,コンクリートの引張強度は圧縮強度のほぼ1/10~1/13です。しかし,高強度になると図1に示すようにその比率(引張強度/圧縮強度)は小さくなります。
(4)×誤り。コンクリートの乾燥収縮に影響を及ぼす要因には単位水量,セメント量,セメントの種類,骨材の品質,空気量,養生方法等があげられます。骨材については,その弾性係数が大きいほど,コンクリート内部の拘束力が高まり乾燥収縮ひずみは小さくなります。
【No.58】
硬化コンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)直径が等しいコンクリート供試体の圧縮強度の試験結果は,直径に対する高さの比が小さくなるほど低くなる。
(2)硬化コンクリートのクリープひずみは,載荷開始時の材齢が若いほど大きくなる。
(3)コンクリートの弾性係数(ヤング係数)は,圧縮強度に比例する。
(4)コンクリートのクリープひずみは,セメントペースト量が多いほど大きい。
クリックで【No.58】の解答と解説をみる
正解は(2)(4)
【解説】
(1)×誤り。コンクリート供試体の形状や寸法はコンクリートの破壊性状に大きな影響を及ぼします。一般的には,供試体の直径に対する高さの比が小さいほど見かけの圧縮強度は大きくなります。
(2)○正しい。コンクリート中でクリープに関与するのは,主にセメントペーストの部分です。載荷開始時の材齢が若いコンクリートほど,セメントペースト部分の組織が載荷荷重によって弛緩しやすくなり,クリープひずみが大きくなります。
(3)×誤り。コンクリートの弾性係数(ヤング係数)と圧縮強度の関係は,一般的な強度の範囲の範囲ではおよそ図1に示すようなもので,気乾単位容積質量によっても異なりますが,その比率は圧縮強度が大きくなると小さくなります。さらに高強度・超高強度コンクリートの範囲では,その比率が小さくなります。
(4)○正しい。クリープとは,荷重が持続的に続いた場合に時間の経過とともに初期のひずみが増大する現象をいいます。弾性ひずみに対するクリープひずみの比率をクリープ係数と呼びます。クリープに影響する要因としては,コンクリートの配・調合,材齢,載荷荷重,養生方法,使用材料の品質などがあり,たとえばセメントペーストが多いほど,骨材容積が小さいほどクリープは大きくなります。
【No.59】
硬化コンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートの熱膨張係数は,骨材種類の影響を受け,石灰岩を用いた場合は硬質砂岩を用いた場合よりも大きい。
(2)コンクリートのクリープ係数が大きいほど,乾燥収縮ひび割れが生じやすい。
(3)水セメント比が小さいコンクリートでは,湿潤状態においても自己収縮が生じる。
(4)AE剤を用いないコンクリートよりも,AEコンクリートの方が,水密性は低い。
クリックで【No.59】の解答と解説をみる
正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。コンクリートの熱的性質は主に使用骨材の石質と単位量によって変化します。表1に示すように普通コンクリートの線膨張係数は常温で7~13×10-6/℃で,セメントペーストの熱膨張率は10~20×10-6/℃,骨材は表2に示すように5~8×10-6/℃です。普通コンクリートの熱膨張率は,セメントペーストと骨材の中間的な値となります。骨材の中でも石灰岩の熱膨張率はもっとも小さく,この骨材を使用したコンクリートも他の骨材を使用したコンクリートよりも小さいです。
(2)×誤り。クリープは持続荷重のもとで時間の経過とともにひずみが増大する現象です。よって,拘束の程度が同じ場合にはクリープ(クリープ係数)の大きいコンクリードほど内部拘束力は小さくなり,乾燥収縮等によってひび割れが発生する可能性は小さくなります。
(3)○正しい。自己収縮とは,セメントの水和により凝結始発以後に巨視的に生じる体積減少をいいます。自己収縮に影響を及ぼす因子としては結合材量,混和材料種類と置換率などが上げられます。水セメント比が小さい高強度コンクリートなどでは単位セメント量が多くなり結合材量が増加し,凝結始発以後の湿潤状態において自己収縮が生じます。
(4)×誤り。AE剤によって運行された空気(entrained air:エントレインドエア)は,独立した気泡であるため,通常の範囲内では水の通り道とはならず,水密性に影響を及ぼしません。
【No.60】
鉄筋コンクリート構造物の耐久性に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)硫酸塩は,コンクリート中でアルミン酸カルシウム水和物を生成し,著しい膨張を引き起こす。
(2)中性化深さは,経過年数にほぼ比例する。
(3)耐凍害性は,同一空気量では気泡間隔係数が小さいほど向上する。
(4)アルカリシリカ反応は,雨掛かりの部分よりも乾燥している部分の方が生じ易い。
クリックで【No.60】の解答と解説をみる
正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。硫酸塩は,コンクリート中の水酸化カルシウムおよびセメント中のアルミン酸三カルシウムと反応してエトリンガイトを生成し,そのエトリンガイトが吸水膨張することでコンクリートを破壊させます。
(2)×誤り。中性化とは,空気中の二酸化炭素の作用を受けて,コンクリート中の水酸化カルシウムが徐々に炭酸カルシウムになり,コンクリートのアルカリ性が低下する現象をいいます。その進行は,時間の平方根に比例するとされています。
(3)○正しい。凍害は,コンクリートに含まれる水分が凍結し,凍結膨張に見合う水分がコンクリート中を移動する際に生じる水圧により、コンクリート組織を破壊させる現象です。同一空気量の場合,微小な独立した気泡が連行されているほど(すなわち,気泡間隔係数が小さいほど),耐凍害性は向上します。
(4)×誤り。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して生じる現象です。雨掛かりのように水分が多く供給される環境下ではアルカリシリカ反応が進行しやすいです。