【過去問演習(3)No.61-65_耐久性】コンクリート技士 問題と解説

技士
【No3-13】聞き流し_コンクリート技士_一問一答
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【No.61】

鉄筋コンクリート中の鋼材の腐食に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)中性化によって鋼材位置のコンクリートのアルカリ性が低下すると,鋼材表面の不動態被膜が部分的に破壊され,腐食が発生しやすい状態となる。
(2)鋼材位置のコンクリートに一定量以上の塩化物イオンが含まれると,鋼材表面の不動態被膜が部分的に破壊され,腐食が発生しやすい状態となる。
(3)不動態被膜が部分的に破壊され,鋼材表面にアノード部(陽極)とカソード部(陰極)が形成されると,腐食電流が生じる。
(4)コンクリートが乾燥していると,腐食電流が極めて流れやすく,鋼材の腐食が進行しやすくなる。
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正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。中性化深さが鋼材位置まで達すると,コンクリート中の高アルカリにより鋼材表面に存在していた不動態被膜(腐食抑制作用のある薄膜)が破壊されて,腐食が進行しやすい状態となります。
(2)○正しい。鋼材位置のコンクリートが高アルカリ性であっても,鋼材位置のコンクリート中に塩化物イオンが一定量以上存在すると,鋼材表面の不動態被膜が破壊されて腐食が進行しやすい状態となります。
(3)○正しい。鋼材表面の不動態被膜が破壊されると,破壊された部位で陽極部(アノード部)と陰極部(カソード部)が形成されます。陽極部では鋼材(Fe)が電子を放出して鉄イオン(Fe2+)に変化する反応が,陰極部ではコンクリート中の酸素(02)と水(H20)が陽極部で放出された電子を消費する反応が生じ,腐食電池が形成されます。
(4)×誤り。腐食電流は,不動態被膜の破壊程度に起因する鋼材とコンクリート界面の抵抗(分極抵抗)と,コンクリート細孔内の電解質の移動のしやすさを示す抵抗(電気抵抗)に影響され,両者の抵抗が小さいほど流れやすくなります。コンクリートが乾燥した状態ではコンクリートの電気抵抗が増加するため,腐食電流は小さくなります。

【No.62】

コンクリートの耐久性に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)常時湿潤環境下にあるコンクリートは,乾燥環境下にあるコンクリートに比べて中性化速度が大きくなる。
(2)凍害で生じるポップアウトは,吸水率が高い骨材を用いることで防止できる。
(3)アルカリシリカ反応における反応性骨材のペシマム量は,骨材の種類や粒度の影響を受ける。
(4)塩酸は,セメント水和物と反応してコンクリートに著しい膨張を生じさせる。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した二酸化炭素が細孔溶液中に溶解して炭酸イオン等に変化し,コンクリートの水和生成物と反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。一般に,湿潤より乾燥状態であるほうが二酸化炭素の侵入が容易なため,中性化の進行は速くなります。ただし,コンクリートが著しく乾燥した状態では,炭酸化反応に必要な水分が少ないため,逆に中性化の進行は遅くなります。
(2)×誤り。凍害は,コンクリートに含まれる水分が凍結し,水の凍結膨張に見合う水分がコンクリート中を移動する際に生じる水圧によりコンクリート組織を破壊させる現象です。吸水率が高い骨材を使用すると,凍結時に骨材自体が凍結膨張し,表面のモルタルをはじき出す現象(ポップアウト)が生じやすくなります。
(3)○正しい。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して発生する現象です。このうち,反応性骨材については,アルカリシリカ反応による膨張量がもっとも大きくなる反応性骨材の割合(ペシマム量)が存在します。また,ペシマム量は骨材の種類や粒度によって変化します。
(4)×誤り。コンクリートに著しい膨張をもたらす物質は硫酸塩であり,硫酸塩がセメント水和物と反応するとエトリンガイトを生成して吸水膨張することでコンクリートを破壊させます。塩酸は,セメント水和物を溶解して侵食させる作用はありますが,コンクリートを膨張させることはありません。

【No.63】

コンクリートの耐久性の向上を目的とした混合セメントの使用に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)アルカリシリカ反応を抑制するため,高炉セメントB種を用いた。
(2)中性化速度を遅くするため,高炉セメントC種を用いた。
(3)海水に対する化学的抵抗性を向上させるため,フライアッシュセメントB種を用いた。
(4)温度ひび割れを抑制するため,フライアッシュセメントC種を用いた。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。高炉スラグは,セメントの水和過程で生成する水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応して水酸化物イオン(OH)濃度を減少させるとともに潜在水硬性の発現により細孔構造を密にする(水やアルカリイオンが移動しにくくなる)ことで,アルカリシリカ反応を抑制する効果を発揮します。ただし,その効果を得るには,高炉スラグの質量分率40%以上(高炉セメントB種またはC種相当)でなければなりません。
(2)×誤り。高炉セメントに含まれる高炉スラグ微粉末は,セメントの水和過程で生成する水酸化カルシウムと反応してコンクリート中の水酸化物イオン(OH)濃度を減少させます。そのため,高炉スラグの質量分率が大きいセメントほどコンクリート中のpHは低くなり中性化速度は大きくなります。
(3)○正しい。フライアッシュセメントを用いたコンクリートは十分に湿潤養生を行うと,フライアッシュ周辺部がポゾラン反応生成物で満たされ水密性が大幅に向上します。また,セメントの水和反応に際して遊離石灰の生成も少なくなるため,海水に対する化学的抵抗性も大きくなります。
(4)○正しい。フライアッシュをセメントの一部と代替して使用した場合,セメントの水和熱の発生か緩和されるため,温度ひび割れの抑制に有効です。とくにフライアッシュの質量分率の大きいフライアッシュセメントC種ほどその効果は高いです。

【No.64】

コンクリートの水セメント比を60%から40%にした場合の耐久性に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートの水セメント比を60%から40%にした場合,中性化速度は,速くなる。
(2)コンクリートの水セメント比を60%から40%にした場合,耐凍害性は,低下する。
(3)コンクリートの水セメント比を60%から40%にした場合,塩化物イオンの拡散係数は,小さくなる。
(4)コンクリートの水セメント比を60%から40%にした場合,アルカリシリカ反応の抑制効果は,向上する。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。中性化とは,大気中の二酸化炭素がコンクリート内に侵入し,コンクリート中の水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムに変化しコンクリートのpHを低下させる現象です。水セメント比が小さいほど,コンクリートの細孔構造は緻密になり二酸化炭素の侵入が抑制されるため,中性化速度は小さくなります。
(2)×誤り。凍害は,コンクリートに含まれる水分が凍結し,水の凍結膨張に見合う水分がコンクリート中を移動する際に生じる水圧によりコンクリート組織を破壊させる現象です。水セメント比を小さくして密実な組織のコンクリートにすることは耐凍害性の向上に有効です。
(3)○正しい。塩化物イオンの拡散係数とは,コンクリート中における塩化物イオンの移動・拡散のしやすさを示す指標であり,この値が大きいほど塩化物イオンが移動・拡散しやすいことを表します。水セメント比を小さくしてコンクリートの組織が密実になるほど,塩化物イオンの拡散係数は小さくなります。
(4)×誤り。アルカリシリカ反応は,セメントから供給されるコンクリート中の水酸化アルカリが少ないほど抑制できます。すなわち,セメント量が大きい(水セメント比の小さい)ほど,アルカリシリカ反応は促進されやすくなります。

【No.65】

コンクリートの中性化に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)大気中でコンクリートの中性化か進行する場合,中性化深さは経過時間の平方根にほぼ比例する。
(2)仕上げの無いコンクリートの壁の場合,屋内側の方が屋外惻よりも中性化速度は小さい。
(3)水セメント比の大きなコンクリートほど,中性化速度は大きい。
(4)同一配(調)合のコンクリートでも,温度が高い環境で供用されている方が中性化速度は大きい。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。中性化深さとはコンクリート表面から中性化した位置までの距離(深さ)を指し,中性化深さは,一般に中性化が進行している期間の平方根に比例します。
(2)×誤り。中性化は,湿潤環境より乾燥環境であるほど,コンクリート中への二酸化炭素の侵入が容易になるため,中性化の進行は速くなります。一般に屋外側より屋内側のほうが乾燥環境となるため,屋内側のほうが中性化速度は大きくなります。
(3)○正しい。中性化は,密実なコンクリートであるほど進行が遅くなります。水セメント比が大きいコンクリートは細孔組織が粗になるため,中性化の進行は速く(中性化速度は大きく)なります。
(4)○正しい。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した二酸化炭素が細孔溶液中に溶解して炭酸イオン等に変化し,溶解したイオンとコンクリートの水和生成物が反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。温度が高い環境ほど上記の反応速度が速くなるため,中性化の進行は速くなります。
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