コンクリート診断士 問題と解説Vol.12
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このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【問56_塩害】
コンクリート中の鉄筋腐食に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
(1)鉄筋の腐食により発生するさびの体積は、元の鋼の体積の約12倍になる。
(2)腐食ひび割れを発生させるのに必要な鉄筋の腐食量は、かぶり(厚さ)が大きくなるほど、小さくなる。
(3)鉄筋径に対するかぶり(厚さ)の比率が小さいほど、腐食ひび割れによるコンクリートのはく離・はく落が生じやすい。
(4)腐食ひび割れは、鉄筋のあきが大きくなるほど、コンクリート内部で連続しやすくなる。
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正解(3)
(1)誤りです。鉄筋腐食による体積膨張は、元の鋼の約2.5倍となります。
(2)誤りです。かぶりが大きくなるほど、鉄筋腐食に伴う膨張圧に対する抵抗力が増します。そのため、必要な鉄筋の腐食量は大きくなります。
(3)問題のとおりです。鉄筋径に対するかぶりの比率が小さいほど、腐食ひび割れによるコンクリートのはく離・はく落が生じやすくなります。
(4)誤りです。鉄筋のあきは、鉄筋同士の間隔です。鉄筋のあきが大きくなるほど、コンクリート内部のひび割れは連続しにくくなります。
【問57_塩害】
塩害によるコンクリート内部の鉄筋の腐食に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)鉄筋腐食によって生成されるさびの色は、酸化の程度によって変化する。
(2)鉄筋腐食によって形成されたアノードとカソードの間を流れる電流密度は、鋼材の腐食速度と比例関係にある。
(3)マクロセル腐食では、アノード反応とカソード反応が同じ場所で生じる。
(4)鉄筋の腐食速度は、海上大気中よりも海中部のほうが小さい。
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正解(3)
(1)問題のとおりです。鉄筋の腐食により生成するのは、水酸化鉄です。水酸化鉄が酸化反応を起こすことによって、さび(酸化鉄)を生じます。さびには、黒さびや赤さびなどが存在し、これらの色の違いは、酸化の程度の違いによります。
(2)問題のとおりです。鉄筋腐食によって形成されたアノードとカソードの間を流れる電流密度は、鋼材の腐食速度と比例関係にあります。
(3)誤りです。マクロセル腐食は、アノード部とカソード部が離れた場所で生じる腐食です。ミクロセル腐食は、アノード部とカソード部が非常に狭い範囲で局所的に生じる腐食です。
(4)問題のとおりです。鉄筋の腐食には、酸素と水の両方の供給が必要です。海中部では、酸素の供給量が少ないため、鉄筋の腐食速度が小さくなります。
【問58_塩害】
コンクリートの表面および内部における鋼材の腐食生成物とその色に関する記述中の(A)~(D)にあてはまる次の語句の組合せのうち、適当なものはどれか。
鋼材の腐食生成物は、腐食の原因や環境によって異なり、その色もこれに対応して変化する。コンクリート表面のさび汁は、酸化作用を受けているので、(A)による(B)を示す場合が多いが、コンクリート内部では、酸化が進行していないので、(C)による(D)を示す。
(A) | (B) | (C) | (D) | |
(1) | Fe2O4 | 黒色 | δ-FeOOH | 赤褐色 |
(2) | Fe2O4 | 赤褐色 | δ-FeOOH | 黒色 |
(3) | δ-FeOOH | 黒色 | Fe2O4 | 赤褐色 |
(4) | δ-FeOOH | 赤褐色 | Fe2O4 | 黒色 |
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正解(4)
鉄筋の腐食により生成するさびは、腐食環境による参加の程度によって異なります。主に、黒さびとなるのは、酸化の進行が進んでいない、Fe2O3やFe3O4です。
コンクリート表面に溶出する、酸化の進行が進んでいるさびは、α-FeOOH(黄色)、γ-FeOOH(赤褐色~白色)、δ-FeOOH(褐色)などです。
コンクリート表面に溶出する、酸化の進行が進んでいるさびは、α-FeOOH(黄色)、γ-FeOOH(赤褐色~白色)、δ-FeOOH(褐色)などです。
【問59_塩害】
塩害に関する次の記述中の(A)~(C)にあてはまる語句として、次の組合せのうち、適当なものはどれか。
海中部では、干潮部と比べるとコンクリート中の鋼材の腐食の進行が(A)なる。これは、海水中の(B)が(C)からである。
(A) | (B) | (C) | |
(1) | 速く | 水酸化物イオン(OH–) | 少ない |
(2) | 遅く | 溶存酸素 | 少ない |
(3) | 速く | 溶存酸素< | 多い |
(4) | 遅く | 水酸化物イオン(OH–) | 少ない> |
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正解(2)
塩化物イオンの侵入による劣化は、潮の干満の繰返しや、波しぶきによって乾湿を繰り返す飛沫帯で最も速くなります。ここで、鉄筋の腐食には酸素と水が必要です。海水中は、溶存酸素が少ないため、塩化物イオンが侵入しても、腐食は発生しにくいです。
【問60_塩害】
高炉セメントを用いたコンクリートの塩害に関する記述中の(A)~(C)にあてはまる次の語句の組合せのうち、適当なものはどれか。
高炉セメント中の高炉スラグ微粉末は、水酸化ナトリウムなどのアルカリや石こうなどの(A)が存在すると、水和反応を生じる。水和生成物として、けい酸カルシウム水和物、(B)などを生成する。(B)は、塩化物イオンが浸入すると、(C)を生成するため、高炉セメントを用いたコンクリートは、塩化物イオンの固定能力が高く、塩化物イオンの浸透に対して高い抵抗性を有する。
(A) | (B) | (C) | |
(1) | 亜硝酸塩 | 水酸化カルシウム | フリーデル氏塩 |
(2) | 硫酸塩 | 硫酸カルシウムアルミネート水和物 | フリーデル氏塩 |
(3) | 硫酸塩 | 水酸化カルシウム | エトリンガイト |
(4) | 亜硝酸塩 | 硫酸カルシウムアルミネート水和物 | エトリンガイト |
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正解(2)
高炉セメントは、セメント中のアルカリなどが刺激となり、水和反応を生じます。この性質を潜在水硬性と言います。潜在水硬性により、高炉スラグのSiO2やAl2O3がアルカリや石こう(硫酸塩)の刺激を受けて、ケイ酸カルシウム水和物、硫酸カルシウムアルミネート水和物などを生成して硬化します。また、硫酸アルミネート水和物は塩化物イオンと反応して、フリーデル氏塩を生成します。