コンクリート診断士 問題と解説Vol.61
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このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【問301_塩害の補修】
塩害に対する補修工法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)塩害により劣化した構造物の補修工法は、劣化程度、コンクリート中の塩化物イオン量(濃度)および供用期間などを考慮して選定する。
(2)鉄筋腐食部の補修には、腐食部と健全部との間のマクロセル腐食を考慮した補修工法を選定する。
(3)塩害とアルカリ骨材反応による複合劣化の補修に電気防食工法を適用するにあたっては、コンクリートの残存膨張性を考慮しなければならない。
(4)内部の鉄筋が塩害で腐食していても外観上コンクリートに劣化が見られない場合、表面被覆工法を適用すれば劣化が防止できる。
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正解(4)
(1)問題のとおりです。塩害により劣化した構造物の補修工法は、劣化程度、コンクリート中の塩化物イオン量(濃度)および供用期間などを考慮して選定します。
(2)問題のとおりです。鉄筋腐食部の補修には、腐食部と健全部との間のマクロセル腐食を考慮した補修工法を選定します。
(3)問題のとおりです。電気防食工法を施すと、コンクリート中の水が電気分解され、鉄筋周辺のpHが上昇するため、アルカリシリカ反応による残存膨張量を考慮しなければなりません。
(4)誤りです。塩分の侵入により内部鉄筋の腐食が進行している場合、表面被覆工法を適用しても腐食が進行します。
【問302_化学的浸食の補修】
既設下水の汚泥処理施設の防食工事に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)施設内部の硫化水素ガス濃度および劣化コンクリートの水和生成物の測定結果より、コンクリートの劣化原因を硫酸浸食と推定した。
(2)コンクリート表面からの硫酸イオン濃度の分布を化学分析により測定し、コンクリートへの浸透深さを決定した。
(3)断面修復材として、速硬性、接着性が大きい鋼繊維補強セメントモルタルを用いた。
(4)劣化環境が激しいので防食被覆材(ライニング材)として、耐酸性に優れたものを選定した。
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正解(3)
(1)問題のとおりです。下水施設内部では、化学的浸食が発生します。嫌気性細菌によって硫化水素(H2S)が生成し、その硫化水素をもとに、好気性細菌によって硫酸(H2SO4)が生成されます。セメント水和物の水酸化カルシウムと硫酸が反応して二水せっこうが生成され、二水せっこうが脱落するという劣化が生じます。
(2)問題のとおりです。下水施設内部では、化学的浸食が発生します。コンクリート表面からの硫酸イオン濃度の分布を化学分析により測定することで、コンクリートへの浸透深さを決定できます。
(3)誤りです。硫酸が存在する環境下では、金属製の鋼繊維の使用は適していません。
(4)問題のとおりです。下水施設のような硫酸環境下では、防食被覆材(ライニング材)として、耐酸性に優れたものを選定します。
【問303_火害の補修】
火災を受けた鉄筋コンクリート造建物の梁部材の対策に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)コンクリート表面全体にすすが付着していたので、すすを除去し、においを封じ込めるためにポリマーセメントペーストを塗布した。
(2)コンクリート表面に微細なひび割れが発生していたが、中性化深さが5mm程度であったので、ひび割れへの注入は行わず、ポリマーセメントペーストを塗布した。
(3)コンクリート表層部の一部に爆裂が生じていたが、中性化深さが10mm程度であったので、爆裂部分にステンレスメッシュを配置したうえでポリマーセメントモルタルを充てんした。
(4)底面および側面に、軸に直交する数mm幅のひび割れが多数発生していたので、エポキシ樹脂を注入した。
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正解(4)
(1)問題のとおりです。表面にすすが付着している場合、受熱温度は300℃以下と推定されます。この場合、構造耐力上、火災の影響を受けていないと判断できるため、においを封じ込めるためにポリマーセメントペーストを塗布するのは適当です。
(2)問題のとおりです。コンクリート表面に微細なひび割れと、中性化深さが5mm程度であることから、ひび割れ注入などは行わず、ポリマーセメントペーストの塗布を行います。
(3)問題のとおりです。中性化深さが10mm程度と深くないことから、一部の爆裂部分のみの断面補修が適当と判断します。
(4)誤りです。底面および側面に、軸直行方向に数mmと大きいひび割れが生じているため、火災によりかぶりコンクリートがはがれ落ちることが懸念されます。また、火害による中性化の可能性が高いことから、かぶり部分のコンクリートを除去して、断面補修を行う等の対策が必要です。
【問304_火害の補修】
ポストテンション方式のプレストレストコンクリートはり部材が火災を受け、コンクリートの表面温度は500℃に達し、コンクリートの一部に爆裂が生じて、その位置のPC鋼材の受熱温度は約400℃であった。このはりに対する評価および補修・補強対策に関する次の記述のうち、適当なものはどれか。
(1)爆裂した部分以外のコンクリートは劣化しておらず、PC鋼材の緊張力の低下もないと判断し、爆裂したコンクリート部分のみを断面修復した。
(2)PC鋼材の緊張力の低下はないと判断し、爆裂した部分および脆弱化したコンクリート部分を断面補修した。
(3)PC鋼材の緊張力が低下していると判断し、プレストレスを導入した後、爆裂した部分および脆弱化した部分を断面補修した。
(4)PC鋼材の緊張力が低下していると判断し、爆裂した部分および脆弱化したコンクリート部分を断面修復した後、プレストレスを導入した。
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正解(4)
(1)誤りです。表面温度500℃に達していることから、冷却後もコンクリートの構造性能は低下していると判断します。
(2)誤りです。鋼材は400℃を超えると機械的性質の低下が生じます。
(3)誤りです。断面修復を行った後にプレストレスを導入します。
(4)問題のとおりです。断面修復を行った後にプレストレスを導入します。
【問305_火害の補修】
鉄筋コンクリート構造の鉄道高架橋の下部で火災が発生した。火災の影響を受けた部材に対して実施した補修・補強対策に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)床版にすすと油煙の付着以外の変状が見られなかったので、すすと油煙の洗浄を行った。
(2)床版の表面から20mmの深さまでコンクリートが溶解していたので、溶解したコンクリートを除去し、ポリマーセメントモルタルで断面修復を行った。
(3)梁の隅角部にすすが付着し、受熱によるコンクリートの浮きが生じていたので、浮いている部分をはつり取り断面修復を行った。
(4)柱の主(鉄)筋が数mにわたって露出し、内部までコンクリートが脆弱化していたので、その柱を撤去し更新した。
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正解(2)
(1)問題のとおりです。表面にすすが付着している場合、受熱温度は300℃以下と推定されます。この場合、構造耐力上、火災の影響を受けていないと判断できます。
(2)誤りです。コンクリートの溶解温度は1200℃であり、溶解していない部分も500℃以上の加熱を受けていると推定されるため、溶解した部分のみの断面補修では不十分です。
(3)問題のとおりです。表面にすすが付着している場合、受熱温度は300℃以下と推定されます。この場合、構造耐力上、火災の影響を受けていないと判断できます。なお、浮きが生じている場合は、浮いている部分のみはつり取り、断面修復を施します。
(4)問題のとおりです。鉄筋が火災によって直接受熱し、内部のコンクリートまで脆弱化しているため、断面補修ではなく、撤去し更新をします。