段落としの規定がなされた背景
土木分野では、『道路橋示方書』の1980(昭和55)年度版で以下の3つの規定が追加されました。
- コンクリートの許容せん断応力が低減
- 軸方向鉄筋の段落としに関する規定が追加
- RC橋脚の地震時変形性能の照査法追加
これは、1980年以前の土木構造物は、耐震性に問題があったためです。
1995年1月の阪神大震災で、高速道路や新幹線の高架橋の崩壊や落橋防止構造の損壊による桁の落下、そしてRC中柱のせん断破壊による地下鉄躯体の崩壊が起きました。
この中で、1980年『道路橋示方書』が適用された橋脚では207脚中1脚が損壊したのに対して、それ以前のものは2834脚中393脚(14%)が倒壊、あるいは鉄筋の破断による耐荷重の低下に至りました。
段落としとは?
地震力(水平力)による構造物の柱への応力は柱頭や柱脚部分などの接合部に集中し、柱中間部分には接合部付近ほど大きな応力が掛からないという考えから、鉄筋量の節約(経済的な合理化)のため柱主筋の「段落とし」(図1)を行うのが定石でした。
しかし、阪神大震災(直下型地震)で水平力ではなく”垂直衝撃力”を受けたRC柱の段落とし部分で破断するような被害が目立ったため、段落とし部の規定が有効であることが確認されました。1980年以前に建造された構造物は現在でも、高強度繊維補強巻き立て工法といった補強工事が進められています。
土木と建築の柱構造規定の違い
建築においては、建築基準法第77条に「柱の構造規定」が示されています。そこには「段落とし」についての規定はありませんが、帯筋を一定量以上確保するといった安全に対する規定が示されています。(図2)
柱の段落としについてのまとめ
”段落とし”とは、柱の主筋を途中で減らすことです。
土木分野では1980年以降の道路橋示方書で段落としが禁止とされています。
建築分野では段落としは禁止されていませんが、柱の帯筋を一定量以上確保しなければならないことが建築基準法に定められています。
以上、段落としについてまとめました。何かのお役に立てば幸いです。