中性化とは?
中性化とは、空気中の二酸化炭素(CO2)がコンクリート中に拡散し、コンクリートのアルカリ性を保っている水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応することで、pHが低下する現象を言います。
拡散とは?
CO2が、コンクリート内部に侵入することを、「拡散する」と言います。拡散は、CO2がコンクリート内部の細孔溶液に溶けることにより生じます。細孔溶液の量が少ない乾燥状態のコンクリートや、逆に細孔溶液がコンクリート組織の細孔を満たしている場合は、CO2の拡散は起こりにくいため、中性化速度は遅くなります。
pHの低下とは?
pHとは、水溶液中の水素イオン濃度指数です。指数はaのn乗(an)で表されるときのnのことです。pHの数値を表す際には、a=10として考えます。例えば、pHが12から10に減ると、溶液中の水素イオン(H+)の数が100(102)倍になります。
pHが減ると、酸性化(中性化)することになります。普通ポルトランドセメントを用いた、普通コンクリ―トのpHは12~13で高アルカリです。混合セメントを用いたコンクリートは、混合材が水酸化カルシウムと反応することでpHが11程度になります。
鉄筋コンクリート構造物のコンクリートが中性化すると、内部の鉄筋が腐食して(さびて)膨張し、コンクリート表面のひび割れや剥落といった劣化が生じます。一般に、pHが10程度以下になると鉄筋の腐食が開始するといわれています。
中性化の特徴
- 相対湿度50~60%で中性化速度が最大となる
- 混合セメントを使用すると中性化速度は速くなる
- 鉄筋はpH12以上で安定(pH10程度以下になると腐食が生じる)
- 中性化試験は、フェノールフタレイン1%エタノール溶液がpH10以上で赤紫色に呈色する原理を用いる
中性化深さ
中性化深さ(C)は経過時間(t)の平方根に比例する
$$C=α\sqrt{t}$$
α=中性化速度係数(中性化深さの実測値から逆算)
中性化(酸化)の化学式
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
水酸化カルシウム(アルカリ性)と二酸化炭素が反応し、炭酸カルシウム(中性)と水が生成
中性化深さの測定
フェノールフタレイン1%溶液を用い、アルカリ性(PH10以上)で赤紫色に呈色する反応から中性化深さを推定します。
JIS(JIS A 1155)によるコンクリートの中性化深さの測定方法
はつりによる方法
- コンクリートを鉄筋位置まではつり、コンクリート粉を除去した後中性化を測定
- 測定面を長時間空気中に放置すると測定面が炭酸化するので注意(フィルムでラッピング等)
- 測定は、コンクリート表面から赤紫色に呈色した部分までを0.5mmの単位で測定
コア採取による方法
- コア側面で行うものと割裂面で行うものがあるが、コア側面はコア採取時の影響を受けやすいため、割裂面で行う方が適切である
- 側面で行う場合は側面に付着する”のろ”を水洗いして除去し、乾燥後に測定
- 5箇所以上測定を行う
- 鮮明な赤紫色に着色した骨材粒子間と粒子間を結んだ直線状で測定する
- コア供試体のサイズが小さいソフトコアリングによる方法もある
その他コンクリートの中性化深さの測定方法
ドリル法
- はつり法、コア採取法は構造物の耐力上問題、補修のための手間や費用が発生するといった問題がある
- ドリルでゆっくりと掘削し、その掘削粉にフェノールフタレインを噴霧したろ紙で受けることで中性化深さを測定