コンクリートが中性化しやすい条件
コンクリートが中性化しやすい条件には、様々なものがあります。
まずは代表的な、中性化しやすい条件を以下に列挙します。
- セメント中のアルカリ量が多いほど中性化しやすい
- 水セメント比(W/C)が大きいコンクリート
- ジャンカなどの施工欠陥部
- 相対湿度50~60%の環境
- 室内の方が屋外より1~3倍ほど中性化速度が速い
- 混合セメントの使用
様々な条件がありますが、今回は【1.セメント中のアルカリ量が多いほど中性化しやすい】という点についてまとめていきます。
アルカリ量が多いほど中性化しやすい
「コンクリートのアルカリ性が、内部の鉄筋の腐食(酸化)を抑制する」という話を聞いたことがあると思います。
これは、コンクリート中の水酸化カルシウムが、鉄筋の周辺をpH12以上という高アルカリ状態に保つことで、鉄筋表面に不働態被膜が形成されるためです。
しかし、アルカリ量が多いほど中性化しやすいということも言われています。一体どういうことなのか・・・。
ここで、中性化とは
中性化は、以下の化学式で表されます。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O ・・・ (式1)
(水酸化カルシウム + 二酸化炭素 → 炭酸カルシウム + 水)
水酸化カルシウムは、pH12~13の強アルカリ性を示し、炭酸カルシウムとなった部分のpHは8.5~10程度になります。つまり、コンクリート中の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素などと反応し、炭酸カルシウムとなることでpHが減少することを中性化と呼んでいます。
中性化は水が無いと起こらない
ここでポイントは、この式は、実際には水が関与しないと起こらない反応であるということです。
上に示す(式1)の反応は、水酸化カルシウムと二酸化炭素が水に溶解してはじめて起こる反応です(式2、式3)。
Ca2+ + 2HCO3– → Ca(HCO3)2 ・・・(式2)
Ca2+ + CO32- → CaCO3 ・・・(式3)
高アルカリ環境下の中性化の仕組み
中性化の、もう一つのポイントは、高アルカリ環境下において、中性化が進行しやすいということです。
水酸化カルシウムが水に溶けると、水溶液中でカルシウムイオンとなります。
カルシウムイオンは、中性環境では重炭酸カルシウムとなり、それが再び解けることで、新たな水酸化カルシウムの溶出が進行しにくくなります。
一方で、アルカリ環境下では、水に溶けにくい炭酸カルシウムとなるため、水溶液中のカルシウムイオンの溶出が進行しやすくなります。
ここで、細孔溶液中のイオンの大部分はナトリウムイオンとカリウムイオンで、それらが多く細孔溶液中に溶解している場合には、水溶液は高アルカリ環境となります。
ナトリウムイオンやカリウムイオンも炭酸と反応し、炭酸アルカリは生成されますが、これらの炭酸アルカリは炭酸カルシウムと比較すると、溶解度が非常に大きいため、再び細孔溶液に炭酸イオンとして溶解し、高アルカリ環境を保つことになります。
高アルカリ環境下では、炭酸カルシウムが生成されることで、細孔溶液中のカルシウムイオン濃度が低くなります。カルシウムイオン濃度が低くなると、新たな水酸化カルシウムが水に溶け、炭酸と反応します。
このように、水酸化カルシウムを由来としたカルシウムイオンがどんどん消費されることで、中性化が進行するということになります。
過去問2018NO.5
化学平衡論の観点からみたコンクリートの中性化(炭酸化)進行のメカニズムに関する、次の記述中の(A)~(C)に当てはまる(1)~(4)の語句の組合せのうち、適当なものはどれか。
コンクリートに侵入した二酸化炭素は、細孔溶液中で炭酸イオン(CO32-)となり、カルシウムイオン(Ca2+)と反応し、溶解度が小さい炭酸カルシウムとして沈積する。この反応により細孔溶液中のカルシウムイオンが(A)ので、濃度の平衡により固相に存在する水酸化カルシウムが細孔溶液中に溶解する。
ナトリウムイオン(Na+)やカリウムイオン(K+)などが多い場合は、細孔溶液が高アルカリ性を維持するため、水酸化カルシウムの溶解が(B)、中性化の進行が(C)なる。
(A) | (B) | (C) | |
---|---|---|---|
(1) | 増加する | より進み | より速く |
(2) | 増加する | 鈍化し | より遅く |
(3) | 消費される | より進み | より速く |
(4) | 消費される | 鈍化し | より遅く |
答え(3)