【プレストレストコンクリート】コンクリート構造物の劣化現象について(診断士試験対策)

プレストレストコンクリートの概要

プレストレストコンクリートは、コンクリートに圧縮応力を発生させ、ひび割れを抑制するコンクリート構造です。

コンクリートにプレストレスを与える方法には、PC鋼材をコンクリートが固まる前に引っ張る、プレテンション方式。コンクリートが固まった後に引っ張るポストテンション方式があります。

プレストレストコンクリートは、内力的には、PC鋼材が引張力を負担し、コンクリートが圧縮力を負担している状態です。

ひび割れを抑制するプレストレストコンクリートの特徴は、梁部材の曲げひび割れ発生耐力は増加するが、曲げ終局耐力はほとんど変化しないということです。

つまり、部材の曲げ終局耐力は曲げひび割れ耐力の増大とは関係なく、引張側鉄筋の耐力で決まるため、曲げ終局耐力はほとんど変化しません。

プレテンション方式の概要

プレテンション方式は、コンクリート打設前にPC鋼材に引張力を導入し、コンクリートが硬化後、引張力を解放します。そのため、部材端部は定着部分となるため、圧縮応力は小さくなり、部材中央ほど圧縮応力は大きくなります。

プレテンション方式は、一般に工場で製作されます。

プレテンション方式のメリットとデメリット

プレテンション方式のメリットとして次の2点が挙げられます。

① PC鋼材を、コンクリートの付着によって定着するため、特別な定着具を必要としない
②工場製作のため、大量生産ができ、コンクリートの品質管理が容易である。

プレテンション方式のデメリットとして次の2点が挙げられます。

①PC鋼材は一般的に直線的に配置されることになり、緊張力もあまり大きくできないので、大きな部材には不向きである
②緊張するために、アバットと呼ばれる、PC鋼材を緊張するときに生じる水平反力を支えるための台座が必要となるため、現場での施工に不向きである

ポストテンション方式の概要

ポストテンション方式では、コンクリート部材にシース管を仕込み、コンクリート硬化後、シース管内のPC鋼材に引張力を導入します。シースとPC鋼材の隙間にはグラウト材を充填し、PC鋼材とシースを一体化させます。

ポストテンション方式のメリットとデメリット

ポストテンション方式のメリットとして次の2点が挙げられます。

①PC鋼材の本数や配置あるいは緊張力を自由に選択できる
②PC鋼材を曲線配置でき、大きな部材だけでなく、いろいろな形状の部材が施工できる

ポストテンション方式のデメリットとして次の2点が挙げられます。

①PC鋼材を定着する、定着具が必要
②PC鋼材の種類に応じて、ジャッキの種類が異なる

リラクセーション

PC鋼材に引張応力を与えて、一定の長さに保っておくと、時間の経過とともにその引張応力が減少します。この現象をリラクセーションといいます。リラクセーションの大きいPC鋼材は、プレストレスの減少量が大きくなります。

プレストレストコンクリート施工時の注意点

①JISでは、プレストレストコンクリート製品には再生骨材を使用してはならない
②シースとPC鋼材の隙間にはノンブリーディングタイプのグラウト材を充填し、PC鋼材とシースを一体化させる

PC構造に特有な劣化

PC構造に特有な劣化現象として、次の3つが挙げられます。

①PC鋼材と定着部、PC鋼材の向きが変わる部分に関する劣化
②ポストテンション方式のPCグラウト充填不良等に伴うPC鋼材の劣化
③接合部・施工目地部を起点とした劣化

PC鋼材と定着部、PC鋼材の向きが変わる部分に関する劣化

鋼材定着部は、外部環境にさらされているため、腐食などの劣化が生じやすくなります。また、PC鋼材の向きが変わる部分、偏向部は、局所的な応力が掛かることで、コンクリートのひび割れ等の劣化が生じやすくなります。

ポストテンション方式のPCグラウト充填不良等に伴うPC鋼材の劣化

グラウトが充填されていないと、シース内に酸素と水分が供給され、PC鋼材の腐食や破断を引き起こす可能性があります。

特に、シースが曲がって配置されている部分は空気だまりとなり、グラウトの充填が不足してしまう可能性が高くなります。

充填検知のためのセンサー等を用いて、充填管理をすることが有効です。

接合部・施工目地部を起因とした劣化

接合部や目地部は、コンクリートのひび割れが生じやすいか所です。ひび割れからの漏水によって内部のPC鋼材が腐食し、局部的に劣化を生じる恐れがあります。

PC構造の補修および補強

PC構造の対策は、次の3つが挙げられます。

①PC鋼材の劣化に関する対策
②構造物の耐久性に関する対策
③構造物の耐荷力に関する対策

それぞれの目的に合った対策の方法を選定することが必要です。

PC鋼材の劣化に関する対策

PC鋼材の劣化に関する対策は、つぎの2つが挙げられます。

①塩害による劣化の対策
②水の侵入による劣化の対策

表面を保護し、劣化因子の侵入を防止する工法や、脱塩工法など、劣化因子を取除く工法が選定されます。

構造物の耐久性に関する対策

構造物の耐久性に関する対策は、表面保護工法やひび割れ注入工法などにより、劣化因子の侵入を遮断する工法が選定されます。

構造物の耐荷力に関する対策

耐荷力に関する対策は、耐荷力を改善したい部材箇所によって異なります。対策方法について列挙します。

①部材の交換
②増厚工法
③コンクリート巻立て工法
④桁増設、支持増設工法
⑤鉄板接着工法、繊維巻立て工法
⑥外ケーブル工法

まとめ

  • プレストレストコンクリート構造は、コンクリートのひび割れを抑制して、耐久性を向上させる構造です。
  • プレストレスの導入には、PC鋼材が用いられます。
  • PC構造特有の劣化現象があるため、目的に合った対策の方法を選定することが必要です。

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