火害の状況は、火害等級Ⅰ(無被害)~火害等級Ⅴ(構造耐力上甚大な被害)までの5段階で定義されます。
コンクリートは、温度が500℃を超えると、冷却後の残存強度が50%以下となり、300℃以下の場合は冷却後の残存強度が70%以上であるという実験結果があります。
また、鉄筋は、温度が500℃であれば、冷却後はほぼ強度を回復します。
受熱温度と強度に関して、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
火害の程度は、大きくは2つに大別される
コンクリートの再使用可能温度と考えられる、温度が300℃になった部分の深さを調べ、補修が必要である等級(火害等級Ⅲ~Ⅴ級)と補修が必要でない等級(火害等級Ⅰ~Ⅱ級)とに区分けをします。
等級Ⅰが最も軽微な火害で、等級Ⅴが最も被害の大きい火害となります。
火害等級Ⅰ級
定義:構造耐力上、火災の影響を全く受けていない
状況:被害無し
補修方法:補修の必要無し
火害等級Ⅱ級
定義:構造耐力上の影響はないが、表面劣化などの被害はある
状況:コンクリート表面の推定受熱温度が300℃以下、表面に黒い煤(すす)、表面に0.2mm以下のひび割れ
補修方法:コンクリート表面を研磨し掃除する
火害等級Ⅲ級
定義:構造耐力上、影響が少ない(軽微な補修で再使用可能)
状況:コンクリート表面の推定受熱温度が300℃以上、表面がピンク色に変色、表面に0.3mm以上のひび割れ
補修方法:コンクリート表面の補修
火害等級Ⅳ級
定義:構造耐力上、影響が大きい(補修・補強によって再使用可能)
状況:灰白色に変色、表面にに数mmのひび割れ、鉄筋が一部露出
補修方法:かぶりコンクリートをはつり、断面修復
火害等級Ⅴ級
定義:構造耐力上、甚大な被害がある(部材の取り替えが必要)
状況:淡黄色に変色、床スラブが抜け落ちる、主筋の座屈
補修方法:打ち直し等、躯体の再構築が必要
コンクリート診断士試験過去問の問題例
火災を受けた鉄筋コンクリート造建物の梁部材に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
- コンクリート表面全体にすすが付着していたので、すすを除去し、においを封じ込めるためにポリマーセメントペーストを塗布した。
- コンクリート表面に微細なひび割れが発生していたが、中性化深さが5mm程度であったので、ひび割れへの注入は行わず、ポリマーセメントペーストを塗布した。
- コンクリート表層部の一部に爆裂が生じていたが、中性化深さが10mm程度であったので、爆裂部分にステンレスメッシュを配置した上でポリマーセメントモルタルを充てんした。
- 底面および側面に、軸に直交する数mm幅のひび割れが多数発生していたので、エポキシ樹脂を注入した。
正解(4)
選択肢4.は火害等級Ⅳ級と判断され、かぶりコンクリートをはつり、断面補修を行う等の措置が必要と考えられます。