【診断士の問題と解説】1日5問!(Vol.38)塩化物イオン

コンクリート診断士 問題と解説Vol.38

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 このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。

【問186_塩化物イオン】

 コンクリート構造物から採取した分析用試料を用いて塩化物イオン量の測定を行った。次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)全塩化物イオン量を測定するためにクエン酸水溶液を用いた。
(2)可溶性塩化物イオン量を測定するために50℃の温水を用いた。
(3)抽出した溶液中の塩化物イオン量を電位差滴定法によって測定した。
(4)抽出した溶液中の塩化物イオン量をイオンクロマトグラフ法によって測定した。
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正解(1)

(1)誤りです。クエン酸水溶液は、鉄筋の腐食量調査に用います。鉄筋のサンプルを採取し、10%クエン酸水素2アンモニウム溶液で錆を除去した後の鉄筋の重量と、鉄筋の標準的な重量とを比較し、重量減を調べる方法です。
全塩化物イオン量の測定方法は、電位差滴定法、吸光光度法、硝酸銀滴定法およびイオンクロマトグラフ法があります。
(2)問題のとおりです。塩化物イオンには、可溶性塩化物イオンと、固定化された塩化物イオンがあります。可溶性塩化物イオンは、水に溶けやすく、鉄筋の腐食に影響を及ぼします。一方、フリーデル氏塩のように、コンクリート中に固定化された塩化物イオンは、鉄筋の腐食には影響を与えません。可溶性塩化物イオンは、試料を50℃の温水で30分間振とうさせ、採取します。
(3)問題のとおりです。電位差滴定法は、塩化物イオンを含む溶液に電極を設置し、電位差(単位:ボルト)を測定する方法です。塩化物イオンを含む溶液に硝酸銀溶液を滴定し、硝酸銀溶液の滴定量と電位差の変化から塩化物イオンの量を測定します。
(4)問題のとおりです。クロマトグラフ法は、ギリシャ語で色を意味するクロマと、記録を意味するグラホスから命名されたと言われています。イオンクロマトグラフ法は液体試料中のイオン成分を検出する手法で、試料内のイオンを分離、検出することでイオン成分の定量分析が可能です。。

【問187_塩化物イオン】

 JCI SC4-4987(硬化コンクリート中に含まれる塩分の分析方法)に基づいて行った可溶性塩化物イオン量(濃度)の測定に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)採取したコアから、乾式のコンクリートカッターを用いてコンクリート試料を切り取った。
(2)コンクリート試料を粗骨材を含めて149μmふるいを全量通過するまで微粉砕した。
(3)微粉砕した試料を蒸留水に入れて加熱煮沸した後、ろ液を採取した。
(4)ろ液をN/200硝酸銀標準溶液を用いて電位差滴定した。
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正解(3)

(1)問題のとおりです。コアの採取は、可溶性塩化物イオンが溶出しない様、乾式のコンクリートカッターを用います。
(2)問題のとおりです。可溶性塩化物イオンの調査では、試料を149μmのふるいを全量通過するように粉砕し、分析用の資料とします。
(3)誤りです。可溶性塩化物イオンの抽出では、50℃の温水で30分間振とうさせます。
(4)問題のとおりです。N/200は、溶液1L中の溶質のグラム当量数を表します。ここでは、溶液1L中に1/200mol(0.005mol)の硝酸銀溶液が溶けているという意味で、溶液の濃度を表すものです。

【問188_塩化物イオン】

 JIS A 1154:2003(硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法)によるコンクリート中の塩化物イオンの定量操作に関する記述中の(A)~(D)にあてはまる語句の組合せとして、次のうち、適当なものはどれか
・コンクリートを(A)mm以下に微粉砕し、化学天びんを用いて5.00gはかりとって分析試料とした。
・分析試料に(B)を加えて溶液のpHを3以下とし、(C)分間かき混ぜた。その後、加熱煮沸して塩化物イオンを抽出した。
・塩化物イオンを抽出した溶液を、塩化物イオン電極を用いた電位差滴定装置にセットし、0.1molL(D)溶液で滴定した。
(A) (B) (C) (D)
(1) 0.3 塩酸 60 塩化銀
(2) 0.15 塩酸 30 硝酸銀
(3) 0.15 硝酸 30 硝酸銀
(4) 0.3 硝酸 60 塩化銀
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正解(3)

 全塩化物イオンの滴定方法についての問題です。
(A)コンクリートを0.15mm以下(150μm以下)に微粉砕し、化学天びんを用いて5.00gはかりとって分析試料とします。
(B)(C)分析試料に硝酸を加えて溶液のpHを3以下とし、30分間かき混ぜ、その後、加熱煮沸して塩化物イオンを抽出します。
(D)塩化物イオンを抽出した溶液を、塩化物イオン電極を用いた電位差滴定装置にセットし、0.1mol/L硝酸晋溶液で滴定します。

【問189_塩化物イオン】

 鉄筋コンクリート構造物からコアを採取し、塩化物イオンの濃度の測定を行った。このとき実施した方法に関する次の記述のうち、JIS A 1154:2012(硬化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法)の規定に照らして、誤っているものはどれか
(1)コンクリート用コアドリルを用いてコアを採取する際、冷却には水道水を用いた。
(2)コアからコンクリートの切片を切り出す際、冷却には水道水を用いた。
(3)塩化物イオンの濃度の測定は、同一試料について2回行った。
(4)塩化物イオンの濃度の測定では、電位差滴定法を用いた。
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正解(2)

(1)問題のとおりです。コアの切取りには、コンクリート用のコアドリルを用います。コンクリート用コアドリルを固定し、冷却は水道水を用いてコアを採取します。
(2)誤りです。分析試料の採り方は、塩化物イオンの流出を避けるため、コアからコンクリート切片を乾式コンクリートカッターを用いて切り出します。
(3)問題のとおりです。塩化物イオンの濃度の測定は、同一試料について2回行います。
(4)問題のとおりです。塩化物イオンの濃度の測定で、電位差滴定法を用いるのは、適当です。

【問190_塩化物イオン】

 塩害環境に位置するコンクリート構造物の調査に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)粗骨材の最大寸法の3倍の直径のコアを採取し、粉砕・調製した試料を用いて、塩化物イオンの濃度を測定した。
(2)採取コアの割裂面に硝酸銀溶液を噴霧し、塩化物イオンの浸透深さを調べた。
(3)採取コアを用いて、電子線マイクロアナライザー(EPMA)により塩化物イオン濃度の分布を調べた。
(4)採取コアの中性化した領域の塩化物イオン濃度の測定結果を含めて、塩化物イオンの見掛けの拡散係数を計算した。
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正解(4)

(1)問題のとおりです。粗骨材の最大寸法の3倍の直径のコアを採取し、粉砕・調製した試料を用いて、塩化物イオンの濃度を測定します。
(2)問題のとおりです。採取コアの割裂面に硝酸銀溶液を噴霧し、塩化物イオンの浸透深さを調べます。
(3)問題のとおりです。電子線マイクロアナライザ―とは、電子線を試料に照射し、試料から出てくる信号を検出して、試料表面の拡大像を表示する電子顕微鏡です。中性化を観察したい場合は、コンクリート表面の塩化物(Cl)の分布を観察することで中性化深さの測定ができます。塩素が含まれる部分は暗い画像として観察されます。
(4)誤りです。見かけの拡散係数は、塩化物イオンが、コンクリートの細孔溶液中で固定化をともないながら濃度勾配を駆動力として移動すると見なしたとき、全塩化物イオンを対象として拡散の速さを規定する係数です。中性化領域では、固化されていたフリーデル氏塩の分解が生じるため、見かけの拡散係数の算定は不適当です。
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