【一級建築士過去問_Ⅳ_構造】一日5問!詳しく解説
構造_H30_No.25
建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鉄骨造の建築物において、張り間方向を純ラーメン架構、桁行方向をブレース架構とする場合、方向別に異なる耐震計算ルートを採用してもよい。
2.鉄筋コンクリート構造において、部材のせん断耐力を計算する場合のせん断補強筋の材料強度は、JIS規格品の鉄筋であっても、せん断破壊に対する余裕度を確保するために基準強度の割増しはしない。
3.保有水平耐力は、建築物の一部又は全体が地震力の作用によって崩壊形を形成するときの、各階の柱、耐力壁及び筋かいが負担する水平せん断力の和としてもよい。
4.各階の保有水平耐力の計算による安全性の確認において、ある階の偏心率が所定の数値を上回る場合、全ての階について必要保有水平耐力の割増しをしなければならない。
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【正解(4)】
1.○です。ひとつの建築物において、張り間方向と、桁行方向を別々の耐震計算ルートで設計してもよいです。ただし、階ごとに異なる耐震計算ルートを適用してはいけません。
2.○です。鉄筋コンクリート構造において、JIS規格品であれば基準強度の1.1倍以下の範囲で割増しすることができます。ただし、部材のせん断耐力を計算する場合のせん断補強筋の材料強度は、JIS規格品の鉄筋であっても、せん断破壊に対する余裕度を確保するために基準強度の割増しはしません。
3.○です。保有水平耐力は、建築物の一部又は全体が地震力の作用によって崩壊形を形成するときの、各階の柱、耐力壁及び筋かいが負担する水平せん断力の和として求められます。
4.×です。各階の保有水平耐力の計算による安全性の確認において、ある階の偏心率が所定の数値を上回る場合、当該階について必要保有水平耐力の割増しをします。
構造_H30_No.26
建築物の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.制震構造において、ダンパーのエネルギー吸収効率は、一般に、主架構とダンパーとの接合の構造形式を間柱型とするより、ブレース型とするほうがよい。
2.免震構造において、積層ゴムアイソレータの2次形状係数S2(全ゴム層厚に対するゴム直径の比)は、主に座屈荷重や水平剛性に関係する。
3.プレストレストコンクリート造の梁は、一般に、鉄筋コンクリート造の梁に比べて、地震後の残留変形が大きい。
4.コンクリート充填鋼管(CFT)構造の柱は、鉄骨構造の柱に比べて塑性変形能力が優れているため、軸力比制限や鋼管の幅厚比制限を緩和することができる。
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【正解(3)】
1.○です。間柱型は、架構の中間にダンパーを有する柱を設ける方法で、間接接合型と呼ばれます。一方、ブレース型は架構に直接ダンパーを設ける方法で、直接接合型と呼ばれます。架構の変形がダイレクトに伝わるため、ダンパーのエネルギー吸収効率は、一般に、主架構とダンパーとの接合の構造形式を間柱型とするより、ブレース型とするほうがよいです。
2.○です。積層ゴムアイソレータの2次形状係数S2(全ゴム層厚に対するゴム直径の比)は、ゴム層厚が大きい場合S2は小さくなり、水平剛性が小さくなることで、周期を長くすることができます。 ゴム層厚が小さい場合、S2は大きくなり、積層ゴムの座屈荷重が大きくなります。
3.×です。プレストレストコンクリート造の梁は、PC鋼材に引張力を与え、コンクリート部材に圧縮応力を付与します。PC鋼材の作用により、一般に、鉄筋コンクリート造の梁に比べて、地震後の残留変形が小さいです。
4.○です。コンクリート充填鋼管(CFT)構造の柱は、鉄骨構造の柱に比べて塑性変形能力が優れているため、軸力比制限や鋼管の幅厚比制限を緩和することができます。これは、鋼管の中をコンクリートで充填することで、コンファインド効果により、耐力や靱性が向上するためです。
構造_H30_No.27
木材の防腐に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.木材の腐朽は、木材腐朽菌の繁殖条件である酸素・温度・水分・栄養源のうち、いずれか一つでも欠くことによって防止することができる。
2.木材は、一般に、含水率が25~35%を境にして腐朽しやすくなるため、構造用製材(未仕上げ材)の含水率は、25%以下とされている。
3.心材は、辺材に比べて耐不朽性に優れていることから、腐朽しやすい箇所には、心材が多く含まれる木材を使用する。
4.防腐剤を加圧注入した防腐処理材は、継手や仕口の加工が行われた部分について、その加工面の防腐処理を再度行わずに使用することができる。
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【正解(4)】
1.○です。木材の腐朽は、木材腐朽菌が木材を分解することで生じます。木材腐朽菌の繁殖条件である酸素・温度・水分・栄養源のうち、いずれか一つでも欠くことによって防止することができます。
2.○です。木材は、一般に、含水率が25~35%を境にして腐朽しやすくなるため、構造用製材(未仕上げ材)の含水率は、25%以下とされています。
3.○です。木の幹の中心部である心材は、表面の樹皮に近い辺材に比べて耐不朽性・耐久性に優れています。腐朽しやすい箇所には、心材が多く含まれる木材を使用します。
4.×です。防腐剤を加圧注入した防腐処理材は、継手や仕口の加工が行われた部分については、その加工面は防腐処理を再度行わなければなりません。
構造_H30_No.28
コンクリートに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.乾燥収縮によるひび割れは、水セメント比が同じ場合、単位セメント量が多いコンクリートほど発生しにくい。
2.AE剤を用いたコンクリートは、AE剤により連行された空気がコンクリート中で独立した無数の気泡となることから、凍結融解作用に対する抵抗性が増す。
3.コンクリートの圧縮強度は、一般に、コンクリート供試体の形状が相似の場合、供試体寸法が小さいほど大きくなる。
4.コンクリートの引張強度は、一般に、コンクリートの圧縮強度が大きいほど大きくなる。
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【正解(1)】
1.×です。乾燥収縮は、セメントの水和反応の進行によりコンクリートの体積が減少し、収縮する現象です。コンクリート中のセメント量が多いと収縮量が大きくなり、ひび割れも生じやすくなります。
2.○です。AE剤は、コンクリート中に微細な空気を生じさせる作用があります。微細な空気のボールベアリング効果により、コンクリートの流動性が高まり、充填性が向上します。
3.○です。コンクリートの圧縮強度は、一般に、コンクリート供試体の形状が相似の場合、供試体寸法が小さいほど大きくなります。
4.○です。コンクリートの引張強度は、一般に、コンクリートの圧縮強度の1/10程度です。コンクリートの引張強度は、一般に、コンクリートの圧縮強度が大きいほど大きくなります。
構造_H30_No.29
鋼材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鋼材は、一般に、炭素含有量が多くなるほど、破断に至るまでの伸びが小さくなる。
2.建築構造用低降伏点鋼材LY225は、一般構造用圧延鋼材SS400に比べて降伏点が低く、延性が高いことから、履歴型制震ダンパーの材料に用いられている。
3.降伏点350N/mm2、引張強さ490N/mm2である鋼材の降伏比は、1.4である。
4.建築構造用圧延鋼材SN490B(板厚12mm以上)は、「降伏点又は耐力」の上限値及び下限値が規定されている。
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【正解(3)】
1.○です。鋼材は、炭素含有量が0.8%程度までは、炭素含有量が増すとともに引張強さ、降伏点ともに上昇します。炭素含有量が0.8%程度以上になると、炭素含有量が多くなるほど、破断に至るまでの伸びが小さくなります。
2.○です。建築構造用低降伏点鋼材LY225は、一般構造用圧延鋼材SS400に比べて降伏点が低く、延性が高いことから、履歴型制震ダンパーの材料に用いられています。
3.×です。降伏比=降伏点/引張強さです。降伏点よりも、引張強さのほうが大きい値を取るため、降伏比は1.0以上にはなりません。
4.○です。板厚12mm以上の建築構造用圧延鋼材SN400BおよびSN490B、板厚16mm以上のSN400CおよびSN490Cは、「降伏点又は耐力」の上限値及び下限値が規定されています。B、C、共に、溶接性が保証されています。さらにCは板厚方向の引張力に対する性能が確保されています。
構造_H30_No.30
建築物の構造計画及び構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.建築物の耐震性を向上させる手段として、構造体の強度を大きくする方法、構造体の塑性変形能力を高める方法、建築物の上部構造を軽量化する方法等がある。
2.特定天井のうち、天井と周囲の壁等との間に隙間を設けない構造方法では、天井と壁等が一体となって動くので、地震時における天井材の脱落に対する安全性の検討を省略することができる。
3.銑鉄せんてつ の製造時に発生する高炉スラグを利用した高炉セメントを構造体コンクリートに用いることは、環境に配慮した建築物を実現することにつながる。
4.鉄筋コンクリート造の建築物の耐久性を向上させる手段として、コンクリートの設計基準強度を高く設定する方法、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを大きく設定する方法等がある。
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【正解(2)】
1.○です。建築物の耐震性を向上させる手段として、構造体の強度を大きくする方法、構造体の塑性変形能力を高める方法、建築物の上部構造を軽量化する方法等があります。
2.×です。特定天井のうち、天井と周囲の壁等との間に隙間を設けない構造方法では、天井と壁等が一体となって動くので、地震時における天井材の脱落に対する安全性の検討を行う必要があります。
3.○です。産業廃棄物である高炉スラグを利用した、高炉セメントを構造体コンクリートに用いることは、環境に配慮した建築物を実現することにつながります。
4.○です。鉄筋コンクリート造の建築物の耐久性は、ひび割れと中性化に関係します。耐久性を向上させる手段として、コンクリートの設計基準強度を高く設定する方法、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを大きく設定する方法等があります。