【No.161】
海水の作用を受けるコンクリート(海洋コンクリート)に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)飛沫帯では,海水による化学的作用に加え,波によるすりへり作用を受ける。
(2)海水に含まれる硫酸マグネシウムは,セメントの水和生成物と反応し,コンクリートを劣化させる。
(3)海水に対する化学的抵抗性は,高炉セメントB種よりも普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートの方が高い。
(4)耐久性から定まる水セメント比の最大値は,一般環境で用いられるコンクリートよりも小さく定められている。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。飛沫帯は波しぶきの作用を受ける範囲であるため,海水による化学的作用とともに,波によるすりへり作用も受けやすい。
(2)○正しい。海水に含まれる硫酸マグネシウム(MgSO4S)は,セメントの水和生成物である水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応して,膨張性の石こうの結晶と水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生成します。さらに,石こうの一部はセメント中のアルミン酸三カルシウム(C3A)と反応してエトリンガイトを生成し,そのエトリンガイトが体積膨張を起すことで,コンクリートにひび割れが生じます。
(3)×誤り。コンクリートの海水に対する化学的抵抗性を向上させるには,C3Aの少ないセメントの使用や,Ca(OH)2の生成量の少ない高炉セメントおよびフライアッシュセメントの使用が有効です。
(4)○正しい。海水の作用を受けるコンクリートの水セメント比の最大値は,塩化物イオンの侵入に伴う鋼材の腐食,海水の化学作用,波浪・凍結融解など物理的作用に対する抵抗性を高めるために,一般環境で用いるコンクリートよりも小さく定められています。
【No.162】
海水の作用を受ける鉄筋コンクリート構造物の位置と劣化の程度の関係に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)すりへりによって生じる劣化の度合いは,波が直接作用する部位よりも最高潮位から上60cm以上の位置のほうが小さい。
(2)やむを得ず打ち継ぎ目(打ち継ぎ)を設ける場合には,波が直接作用する部位よりも最高潮位から上60cm以上の位置に計画するのがよい。
(3)同じコンクリートが打ち継ぎなしで施工され,かつ,かぶり(厚さ)が同じであれば,鉄筋の腐食速度は,波が直接作用する部位よりも最低潮位から下60cm以下の位置のほうが速い。
(4)硫酸塩による化学作用で生じる劣化の度合いは,最高潮位から上60cm以上の位置よりも最低潮位から下60cm以下の位置のほうが大きい。
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正解は(4)
【解説】
(1)○正しい。すりへりは,漂砂,波浪などの持続作用などによってコンクリート表面が磨耗することで生じます。つまり,波が直接作用する部位ほど,すりへりによる劣化の度合いは著しくなります。
(2)○正しい。打ち継ぎ目は弱点となりやすいので,感潮部に打ち継ぎ目を設けるのをできるだけ避け,とくに,最高潮位から上60cmと最低潮位から下60cmとの間の感潮部分には打ち継ぎ目を設けないように連続作業でコンクリートを打ち込むのがよいです。
(3)○正しい。コンクリート中の鉄筋が腐食するには酸素と水が必要です。常時海水中にある位置は,塩化物イオンの供給量は多いですが,酸素の供給がほとんどないため,鉄筋はほとんど腐食しません。一方,飛沫帯・感潮帯である位置は塩化物イオンの供給量も多く,さらに酸素も供給されるため,鉄筋の腐食が進行しやすいです。
(4)×誤り。硫酸塩は海水に含まれ,セメントの水和生成物である水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と反応して,膨張性のある石こうの結晶と水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)を生成します。さらに,生成された石こうの一部はセメント中のアルミン酸三カルシウム(C3A)と反応して膨張性のエトリンガイトを生成します。これらの体積膨張によってコンクリートにひび割れを発生させる現象が硫酸塩の化学作用による劣化です。この劣化は常時海水に接する位置のほうが進行しやすいです。
【No.163】
海水の作用を受けるコンクリート(海洋コンクリート)に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)海水による劣化現象には,鋼材の腐食,化学作用によるコンクリート自体の劣化,物理作用によるコンクリート表面の損傷などがある。
(2)高炉セメントやフライアッシュセメントを用いたコンクリートは,海水に対する化学抵抗性が低い。
(3)飛沫帯や海上大気中では,海水中の塩化物の作用により凍害の影響を受けやすい。
(4)コンクリートは,打ち継ぎ目を感潮部分に設けないように,連続作業で打ち込むとよい
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。海水による劣化には,①塩化物イオンの侵入に伴う鋼材の腐食,②海水成分の化学作用によるコンクリート自体の劣化,③波浪・凍結融解など物理的作用によるコンクリート表面の損傷などに大別されます。
(2)×誤り。コンクリートの海水に対する化学的抵抗性を向上させるには,C3Aの少ないセメントの使用や,Ca(OH)2の生成量の少ない高炉セメントおよびフライアッシュセメントの使用が有効です。
(3)○正しい。飛沫帯,感潮帯および海上大気中は,気象の変化(温度や湿度の変化)の影響を受けやすい環境であるため,凍害が生じやすいです。とくに,飛沫帯や感潮帯は,乾湿繰返し作用によって凍害が激しくなります。一方,海中は気象の変化の影響を受けにくいので,凍害の影響を受けにくいです。
(4)○正しい。打ち継ぎ目は弱点となりやすいので,感潮部に打ち継ぎ目を設けることはできるだけ避け,とくに最高潮位から上60cmと最低潮位から下60cmとの間の感潮部分には打ち継ぎ目を設けないように連続作業でコンクリートを打ち込む必要があります。
【No.164】
海水の作用を受けるコンクリートに関する次の一般的記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)海洋・海岸環境が構造物に作用する厳しさは,海中>飛沫帯>海上大気中の順である。
(2)海水中の硫酸マグネシウムは,セメントの水和生成物と反応してコンクリートに体積膨張を生じさせる。
(3)海水の作用を受けるコンクリートは,海水の作用を受けないコンクリートに比べて,凍害を生じやすい。
(4)高炉セメントB種を用いたコンクリートは,海水に対する化学抵抗性に優れる。
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正解は(1)
【解説】
(1)×誤り。海水の作用による劣化は,①塩化物イオンの侵入に伴う鋼材の腐食,②波浪・凍結融解など物理的作用によるコンクリート表面の損傷,③海水成分の化学作用によるコンクリート自体の劣化に大別されます。海洋・海岸環境が構造物に作用する厳しさは,潮の干満の繰返し,波浪や波しぶきによって乾湿を繰り返す飛沫帯においてもっとも激し<,飛沫帯>海上大気中>海中の順になります。
(2)○正しい。海水中の塩類のうち,コンクリートに有害な作用を与えるのは,硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムです。いずれもセメント中の水酸化カルシウムと反応し,前者は体積膨張を引き起こし,後者は多孔質にさせます。
(3)○正しい。気温が著しく低くなると,濃縮された海水の化学的な作用と凍結融解の作用が複合するため,コンクリートの耐凍害性は淡水中にある場合より海水中にある場合の方が著しく低下します。
(4)○正しい。コンクリートの海水に対する化学的抵抗性を向上させる観点からは,C3Aの少ないセメントの使用や,Ca(OH)2の生成量の少ない高炉セメントおよびフライアッシュセメントの使用が有効です。
【No.165】
海水の作用を受けるコンクリート構造物に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)凍結融解作用による劣化は,淡水中より海水中の方が厳しい。
(2)鋼材腐食の程度は,海中よりも海上大気中の方が大きい。
(3)打ち継ぎ目を設ける場合は,海水中よりも感潮帯に設けるのがよい。
(4)コンクリートは,十分硬化するまで海水に洗われないように養生しなければならない。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。凍結融解作用を受けるほど気温が低い場合,海水の化学的な作用と凍結融解の作用が複合するため,淡水中よりも海水中のほうがコンクリートの耐凍害性は著しく低下します。
(2)○正しい。塩化物イオンの浸透に起因する鋼材の腐食は酸素の供給が容易な飛沫帯で激しくなります。
(3)×誤り。打ち継ぎ目は,コンクリートの弱点になります。そのため,海水の作用を受けやすい最高潮位から上60cmと最低潮位から下60cmとの間の感潮部分には,打ち継ぎ目を設けてはいけません。
(4)○正しい。コンクリートが十分に硬化しない状態で海水に接すると,セメントが流出したり,コンクリート表面が洗掘される可能性があります。そのため,コンクリート表面をシートで覆ったり,流水や波がコンクリート表面に影響を及ぼさない高さまで型枠を設置するなど,コンクリートの養生を適切に行う必要があります。