【過去問演習No.171-175】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.171】

プレストレストコンクリートに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)プレストレストコンクリートは,柱より,はりのように曲げモーメントを受ける部材に多く用いられる。
(2)導入したプレストレスは,コンクリートのクリープやPC鋼材のリラクセーションにより増加する。
(3)ポストテンション方式は,コンクリート硬化後シース内のPC鋼材を緊張し,プレストレスを導入する方式である。
(4)プレストレスを導入した部材では,一時的な荷重によって変形が生じても,PC鋼材が降伏していなければ,その荷重が作用しなくなると変形はほぼ元に戻る。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。プレストレスの導入は,曲げモーメントによって生じる曲げ引張に抵抗する手段として有効です。一般的に,柱のように軸圧縮力が作用している条件で,さらにプレストレスの導入により圧縮力を増加させることによる構造的な効果は小さいです。
(2)×誤り。プレストレス量は,PC鋼材のリラクゼーションやコンクリートのクリープ,乾燥収縮に起因する収縮により時間経過とともに減少します。
(3)○正しい。ポストテンション方式とは,鉄筋の組立て時にPC鋼材を通すためのシースを配置し,コンクリートを打ち込み,所定の強度が発現したことを確認の後,ジャッキによってPC鋼材に引張力を与え,その状態でPC鋼材の両端部を定着具で固定し,コンクリートに圧縮力を与える方法。緊張力を部材相互の接合にも利用できるので,現場での利用に適しています。
(4)○正しい。プレストレストコンクリート構造の特徴の一つを示す記述であり,プレストレストコンクリート構造部材は,PC鋼材が降伏に至らない範囲では,弾性的に挙動し,ほぼ残留変形が生じません。

【No.172】

プレストレストコンクリートに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)プレストレストコンクリートに用いられるPC鋼材の引張強さは,通常の鉄筋の2~4倍である。
(2)導入されたプレストレスは,PC鋼材のリラクゼーションによって時間の経過とともに増加する。
(3)導入するプレストレスを大きくしても,部材の終局曲げ耐力は増加しない。
(4)プレテンション方式では,コンクリートとPC鋼材間の付着によってコンクリートにプレストレスが導入される。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。プレストレストコンクリートは,高強度鋼材(PC鋼材)を用いて,コンクリートに圧縮応力を与え,荷重によって生ずる引張応力を打消すようにした構造。PC鋼材の引張強さは,通常の鉄筋の2~4倍です。
(2)×誤り。プレストレス量は,PC鋼材のリラクゼーションやコンクリートのクリープ,乾燥収縮に起因する収縮により時間経過とともに減少します。
(3)○正しい。プレストレストコンクリートは,断面破壊状態では,ひび割れが発生し,内部応力の分布は鉄筋コンクリート部材の場合と本質的に同じになるので,終局曲げ耐力Myは,次式のようにPC鋼材の引張力T(=PC鋼材の引張強度×鋼材の断面積)とアーム長jの積の形で表され,鋼材断面積が同じであれば,終局曲げ耐力はプレストレスカに影響されません。
(4)○正しい。プレテンション方式では,アバット(固定アンカー)の間でPC鋼材を緊張し,アバットに定着します。その状態で鉄筋を組立て,型枠を設置した後,コンクリートを打ち込み,コンクリートが所要の強度に達した後,定着していたPC鋼材を緩め,コンクリートと鋼材の付着によって,プレストレスが導入されます。

【No.173】

プレストレストコンクリートに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートのひび割れは,導入されたプレストレスによって生じにくくなる。
(2)部材の終局耐力は,導入されたプレストレス量が大きいほど大きくなる。
(3)コンクリートに導入されたプレストレス量は,時間の経過とともに増加する。
(4)プレテンション方式は,部材内にシースおよびPC鋼材を配置し,PC鋼材の緊張後にシース内にグラウトを充てんする方法である。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。プレストレストコンクリートは,高強度鋼材(PC鋼材)を用いて,コンクリートに圧縮応力を与え,荷重によって生ずる引張応力を打ち消すようにした構造であり,ひび割れは生じにくくなります。
(2)×誤り。プレストレストコンクリートは,断面破壊状態では,ひび割れが発生し,内部応力の分布は鉄筋コンクリート部材の場合と本質的に同じになるので,曲げ耐力Myは,次式のようにPC鋼材の引張力t(=PC鋼材の引張強度×鋼材の断面積)とアーム長jの積の形で表され,鋼材断面積が同じであれば,曲げ耐力はプレストレスカに影響されません。
(3)×誤り。プレストレス量は,クリープや乾燥収縮によって,コンクリートが時間の経過とともに収縮することにより減少します。
(4)×誤り。記述はポストテンション方式を記述したものです。プレテンション方式では,アバット(固定アンカー)の間でPC鋼材を緊張し,アバットに定着します。その状態で鉄筋を組み立て,型枠を設置した後,コンクリートを打ち込み,コンクリートが所要の強度に達した後,定着していたPC鋼材を緩め,コンクリートと鋼材の付着によって,プレストレスが導入されます。

【No.174】

プレストレストコンクリートに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)断面を小さくできるので,スパンの大きなコンクリート橋梁に適している。
(2)曲げモーメントが卓越するはり部材より,軸圧縮力が卓越する柱部材に適している。
(3)プレテンション方式は,工場製品の製造に適している。
(4)ポストテンション方式は,大型のプレキャスト部材の現場での組立・接合に適している。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。プレストレスコンクリート構造は,RC構造よりも断面を小さくできるので,自重が支配的になる大スパンの構造物に適しています。
(2)×誤り。プレストレストコンクリートは,断面破壊状態では,ひび割れが発生し,内部応力の分布は鉄筋コンクリート部材の場合と本質的に同じになるので,曲げ耐力Mは,次式のようにPC鋼材の引張力t(=PC鋼材の引張強度×鋼材の断面積)とアーム長jの積の形で表され,鋼材断面積が同じであれば,曲げ耐力はプレストレスカに影響されません。
(3)○正しい。鋼材を緊張した状態でコンクリートを打ち込んだ後,アバットに定着していたPC鋼材を緩め,コンクリートとPC鋼材の付着によってコンクリートにプレストレスを導入するのがプレテンション方式です。アバットや促進養生設備が必要なことから,一般には工場製品の製作に用いられます。
(4)○正しい。ポストテンション方式とは,鉄筋の組立て時にPC鋼材を通すためのシースを配置し,コンクリートを打ち込み,所定の強度が発現したことを確認の後,ジャッキによってPC鋼材に引張力を与え,その状態でPC鋼材の両端部を定着具で固定し,コンクリートに圧縮力を与える方法です。緊張力を部材相互の接合にも利用できるので,現場での利用に適しています。

【No.175】

高強度コンクリートおよび高流動コンクリートに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)高強度コンクリートでは,気温の低い時期には凝結が遅れる。
(2)高強度コンクリートでは,水和熱による温度応力が大きくなる。
(3)高流動コンクリートでは,実積率の小さい粗骨材を使用すると自己充てん性が向上する。
(4)高流動コンクリートでは,型枠に作用する側圧が大きく,原則として液圧で設計する。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。高強度コンクリートは水セメント比が通常のコンクリートより小さいです。そのため,製造においては,単位水量を過剰に大きくさせない配慮から高性能AE減水剤等を使用します。ただし,高性能AE混和剤の添加が過剰になると,大幅な凝結遅延を引き起こすことがあり,気温が低いとその遅延は著しくなります。
(2)○正しい。高強度コンクリートは単位セメント量が多くなるため,水和熱による温度応力が大きくなる傾向にあります。
(3)×誤り。高流動コンクリートの自己充てん性は,骨材粒子の形状や粒度分布のよい実積率の大きい粗骨材を用いると向上します。なお,構造物の配筋条件に応じて自己充てん性(鉄筋間の間隙通過性など)を確保する場合は,配合設計にて単位粗骨材量を適切な範囲に設定して行います。
(4)○正しい。高流動コンクリートは,自己充てん性を付与させた流動性の大きいコンクリートであり,高性能AE減水剤等の使用により凝結が遅延する傾向があります。そのため,型枠に作用する側圧は通常のコンクリートよりも大きく,型枠は液圧として設計するのが原則です。
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