【過去問演習(2)No.66-70_性質】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.66】

コンクリートの中性化に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)中性化の進行は,コンクリートが著しく乾燥している場合や濡れている場合には遅くなる。
(2)中性化の進行は,仕上げの無い場合,屋内側の方が屋外側よりも速い。
(3)中性化の進行は,経過年数に正比例する。
(4)中性化の進行は,炭酸ガスの濃度が高いほど速い。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。一般に大気中の相対湿度が40~60%程度の条件において中性化の進行は速くなります。ただし,コンクリートが著しく乾燥している場合は炭酸化反応に必要な水分が少なくなり,濡れている場合は二酸化炭素がコンクリート中に侵入しにくくなるため,中性化の進行は遅くなります。
(2)○正しい。屋外側コンクリート面は降雨等の影響を受けやすいが,屋内側の面は常に乾燥した環境であるため,屋内側のほうが中性化の進行は速くなります。とくに,屋外側に仕上げがない場合は降雨等の影響を受けやすい。
(3)×誤り。中性化の進行は,期間をtとすると,\(\sqrt{t}\)に比例するとされています。
(4)○正しい。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した炭酸ガスが細孔溶液に溶解して炭酸イオン等に変化し,溶解したイオンとコンクリートの水和生成物が反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。この反応は,炭酸ガスの濃度が高いほど速くなります。

【No.67】

アルカリシリカ反応に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートのアルカリ総量を3.0kg/m3以下にすることは,アルカリシリカ反応の抑制に有効である。
(2)フライアッシュセメントC種の使用は,アルカリシリカ反応の抑制に有効である。
(3)アルカリシリカ反応による膨張は,湿潤状態より乾燥状態にあるコンクリートの方が大きくなる。
(4)アルカリシリカ反応における骨材のペシマム量は,骨材の種類や粒度の影響を受ける。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して発生します。すなわち,セメント等から供給される水酸化アルカリが少ないコンクリートほど,アルカリシリカ反応は抑制されます。JISA5308ー2019付属書B(アルカリシリカ反応抑制対策の方法)では,アルカリ総量が3.0kg/m3以下のコンクリートとすることでアルカリシリカ反応を抑制できるとしています。
(2)○正しい。アルカリシリカ反応はコンクリート中のpHが高いほど進行しやすくなりますが,フライアッシュを混入するとセメントの水和生成物(主として水酸化カルシウム)と反応(ポゾラン反応)して,コンクリート中のpHが低下します。フライアッシュの分量として15%(質量比)以上のフライアッシュセメントB種もしくはC種を使用することにより,アルカリシリカ反応を抑制できるとされています。
(3)×誤り。アルカリシリカ反応の発生条件の一つである水分が少なくなる乾燥状態のコンクリートほど,アルカリシリカ反応は進行しにくくなります。
(4)○正しい。アルカリシリカ反応による膨張量は,反応性骨材の量が多いほど大きくなるわけではなく,膨張量がもっとも大きくなる骨材中の反応性骨材の割合が存在します。これをペシマム量と呼ぶが,この量は骨材の種類や粒度などによって変化します。

【No.68】

鉄筋コンクリート構造物の耐久性に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)硫酸塩は,コンクリート中でアルミン酸カルシウム水和物を生成し,著しい膨張を引き起こす。
(2)中性化深さは,経過年数にほぼ比例する。
(3)耐凍害性は,同一空気量では気泡間隔係数が小さいほど向上する。
(4)アルカリシリカ反応は,雨掛かりの部分よりも,乾燥している部分の方が生じ易い。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。硫酸塩は,コンクリート中の水酸化カルシウムおよびセメント中のアルミン酸三カルシウムと反応してエトリンガイトを生成し,そのエトリンガイトが吸水膨張することでコンクリートを破壊させます。
(2)×誤り。中性化とは,空気中の二酸化炭素の作用を受けて,コンクリート中の水酸化カルシウムが徐々に炭酸カルシウムになり,コンクリートのアルカリ性が低下する現象をいいます。その進行は,時間の平方根に比例するとされています。
(3)○正しい。凍害は,コンクリートに含まれる水分が凍結し,凍結膨張に見合う水分がコンクリート中を移動する際に生じる水圧がコンクリート組織の破壊させる現象です。同一空気量の場合,微小な独立した気泡が連行されているほど(すなわち,気泡間隔係数が小さいほど),耐凍害性は向上します。
(4)×誤り。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して生じる現象です。雨掛かりのように水分が多く供給される環境下ではアルカリシリカ反応が進行しやすいです。

【No.69】

鉄筋コンクリート中の鋼材の腐食に関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)中性化によって鋼材位置のコンクリートのアルカリ性が低下すると,鋼材表面の不動態被膜が部分的に破壊され,腐食が発生しやすい状態となる。
(2)鋼材位置のコンクリートに一定量以上の塩化物イオンが含まれると,鋼材表面の不動態被膜が部分的に破壊され,腐食が発生しやすい状態となる。
(3)不動態被膜が部分的に破壊され,鋼材表面にアノード部(陽極)とカソード部(陰極)が形成されると,腐食電流が生じる。
(4)コンクリートが乾燥していると,腐食電流が極めて流れやすく,鋼材の腐食が進行しやすくなる。
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正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。中性化深さが鋼材位置まで達すると,コンクリート中の高アルカリにより鋼材表面に存在していた不動態被膜(腐食抑制作用のある薄膜)が破壊されて,腐食が進行しやすい状態となります。
(2)○正しい。鋼材位置のコンクリートが高アルカリ性であっても,鋼材位置のコンクリート中に塩化物イオンが一定量以上存在すると,鋼材表面の不動態被膜が破壊されて腐食が進行しやすい状態となります。
(3)○正しい。鋼材表面の不動態被膜が破壊されると,破壊された部位で陽極部(アノード部)と陰極部(カソード部)が形成されます。陽極部では鋼材(Fe)が電子を放出して鉄イオン(Fe2+)に変化する反応が,陰極部ではコンクリート中の酸素(O2)と水(H2O)が陽極部で放出された電子を消費する反応が生じ,腐食電池が形成されます。
(4)×誤り。腐食電流は,不動態被膜の破壊程度に起因する鋼材とコンクリート界面の抵抗(分極抵抗)と,コンクリート細孔内の電解質の移動のしやすさを示す抵抗(電気抵抗)に影響され,両者の抵抗が小さいほど流れやすくなります。コンクリートが乾燥した状態ではコンクリートの電気抵抗が増加するため,腐食電流は小さくなります。

【No.70】

コンクリートの耐久性に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)常時湿潤環境下にあるコンクリートは,乾燥環境下にあるコンクリートに比べて中性化速度が大きくなる。
(2)凍害で生じるホップアウトは,吸水率が高い骨材を用いることで防止できる。
(3)アルカリシリカ反応における反応性骨材のペシマム量は,骨材の種類や粒度の影響を受ける。
(4)塩酸は,セメント水和物と反応してコンクリートに著しい膨張を生じさせる。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した二酸化炭素が細孔溶液中に溶解して炭酸イオン等に変化し,コンクリートの水和生成物と反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。一般に湿潤より乾燥状態であるほうが二酸化炭素の侵入が容易なため,中性化の進行は速くなります。ただし,コンクリートが著しく乾燥した状態では,炭酸化反応に必要な水分が少ないため,逆に中性化の進行は遅くなります。
(2)×誤り。凍害は,コンクリートに含まれる水分が凍結し,水の凍結膨張に見合う水分がコンクリート中を移動する際に生じる水圧がコンクリート組織を破壊させる現象です。吸水率が高い骨材を使用すると,凍結時に骨材自体が凍結膨張し,表面のモルタルをはじき出す現象(ホップアウト)が生じやすくなります。
(3)○正しい。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して発生する現象です。このうち,反応性骨材については,アルカリシリカ反応による膨張量がもっとも大きくなる反応性骨材の割合(ペシマム量)が存在します。また,ペシマム量は骨材の種類や粒度によって変化します。
(4)×誤り。コンクリートに著しい膨張をもたらす物質は硫酸塩であり,硫酸塩がセメント水和物と反応するとエトリンガイトを生成して吸水膨張することでコンクリートを破壊させます。塩酸は,セメント水和物を溶解して侵食させる作用はありますが,コンクリートを膨張させることはありません。
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