例題1<塩害による部分的な補修>
図のように、部分的な補修をしたときの鉄筋の電位について考えます。
腐食発生個所の電位は相対的に卑(-)となり、その周囲の健全部は貴(+)となります。
上図のように断面を部分的に補修すると、補修箇所の電位は局所的に卑(-)となりますが、健全部との境では貴(+)のままとなるため、マクロセル腐食と呼ばれる現象が生じます。
※参考:マクロセル腐食に対して、ミクロセル腐食という現象が存在します。これは、マクロ(大きな視点)かミクロ(小さな視点)の違いで、ミクロセル腐食は非常に狭い範囲で局所的な腐食が起こる現象を差します。
鉄筋の腐食が発生する仕組み
鉄筋表面の酸化被膜が破られると、酸化被膜のない部分がアノード(陽極)部、その周囲がカソード(陰極)部となり、アノード部からカソード部へ、電子e–が移動します。電子、水と酸素が反応し、水酸化物イオンOH–が発生、アノード部での鉄筋の腐食が発生します。
アノード(陽極)=酸化反応
Fe→Fe2++2e–
カソード(陰極)=還元反応
O2+2H2O+4e–→4OH–
腐食反応
Fe2++2OH–→Fe(OH)2+OH–→Fe(OH)3+H2P→γ-FeOOH(赤さび)
つまり、アノード部ではe–が発生するため、卑(-)となります。
例題2<電気防食工法による対策>
次は、図のように電気防食を施した場合を考えます。
腐食発生個所の電位は卑(-)となり、その周囲の健全部は貴(+)となります。これは、前述の腐食の場合と同じです。
電気防食工法は、鉄筋に電子e/を供給することで、腐食部と健全部の電位差を無くし、腐食反応を抑制する工法です。
上の図から、電流が(+)→(-)に流れることが分かります。一方、電子の流れはその逆となります。(高校物理を思い出してください。)
電気防食工法には2種類、外部電源方式と流電陽極方式があります。
流電陽極方式は、鉄筋よりもイオン化傾向が大きい(イオン化しやすい)金属を用いて、外部電源を使用せずに、上図のような電流(電子の流れ)を発生させる方式です。
混同しやすい?自然電位法
自然電位法は、鉄筋の腐食速度を測定する方法です。防食工法では鉄筋に(-)をつなぎますが、自然電位法の場合は鉄筋に(+)をつなぎます。
自然電位法では、自然電位の差が-350mV以下の場合、90%以上の確率で腐食ありと判断されます。
以上、貴(+)、卑(-)についてまとめました。防食工法と腐食測定の時に+と-が逆になる点に注意してください。