【ひび割れ補修方法】躯体の残り使用期間とコストを考えます。

診断士

ひび割れには大きく分けて3段階の補修方法選定理由があります

  1. 構造上有害なひび割れであるかどうか
  2. 進行中のひび割れで、今後もさらにひび割れ幅が大きくなる可能性が高いか
  3. ひび割れが生じる要因として、水の侵入を防ぐべきか、空気(二酸化炭素)の侵入を防ぐべきか

上の図は、それぞれの項目に対して、どのような補修方法が考えられるかの例を示したものです。構造上有害でなく、進行具合も安定化しているひび割れの場合、補修等の措置をとらずに経過観察で良いという場合もあります。

原因がはっきりとしており、構造上有害なひび割れが生じていない場合であれば、補修に対する手間とコストは少なくなります。

また、今後の供用期間を考慮すると解体・撤去をしてしまった方が適当であるという判断もあります。

それでは、上記の1~3の内容について、少し詳しく内容を掘り下げてみます。

1、構造上有害なひび割れであるかどうか

一般的に、下記の幅を超えると、構造上有害なひび割れとして判定されます。

建物外面では 0.2~0.25mm

建物内面では 0.3~0.4mm

引用元:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 6条 許容応力度

また、ひび割れから鉄筋のさびが進行しているかどうかも大きな判断材料です。錆が進行している場合は、コンクリートを斫り出し、再アルカリ化といった対策方法を考える必要があります。

2、進行中のひび割れで、今後もさらにひび割れ幅が大きくなる可能性が高いか

これは、コンクリートの躯体完成後、何年でひび割れが発生および進行してきたかが大きな判断材料になります。

例えば、コンクリート躯体完成後20年が経過してから観察したひび割れであれば、今後の残り使用期間を勘案し、表面の補修程度で済ませ、コストを最小限に抑えることが適しているといった考え方があります。

3、ひび割れが生じる要因として、水の侵入を防ぐべきか、空気(二酸化炭素)の侵入を防ぐべきか

水の侵入によってひび割れが進行するか、それとも二酸化炭素による中性化が主な原因かによって、補修方法が異なります。

水を主原因とするひび割れとしては、ASR、凍害があります。この場合、ひび割れの発生に伴う鉄筋腐食の有無が補修方法の選定理由に大きく影響してきます。

水の侵入を表面防水等で抑えることが出来れば、それ以上のひび割れの進行を食い止めることが出来る可能性があります。

コンクリート診断士試験過去問の選択肢考察

コンクリート診断士の過去問から、上記の内容に沿った問題の例を掲載します。

選択肢1.竣工後5年経過した建物に生じた幅が0.5mmの乾燥収縮ひび割れに、硬質形エポキシ樹脂の注入工法を適用した。
→正しい。竣工後5年は、乾燥収縮ひび割れが安定状態となるので、硬質形エポキシ樹脂は適当です。

選択肢2.鉄筋コンクリート造建物の外壁に生じたひび割れの補修方法に関して、ひび割れ幅が0.8mm~1.0mmであり、ひび割れ幅の変動があるため、ひび割れに沿ってU字形にコンクリートをカットし、シーリング材を充てんすることとした。
→正しい。ひび割れ幅が大きく、変動があることから、可とう性(追従性)の良いシーリング材の使用は適当です。

選択肢3.供用後10年で点検を行った、内陸部にある鉄筋コンクリート造の倉庫について、屋内側にエフロレッセンスを伴うひび割れが発生していたので、屋内側からUカットシーリング材を充てんした。
→誤り。エフロレッセンスは、屋外の雨水等による水分供給によると考えられるため、防水対策は屋外側が必要です。

選択肢4、砂すじが見られたので、ワイヤーブラシで目荒らしし、ポリマーセメントペーストを塗布した。
→正しい。砂すじは内部コンクリートに材料分離が無く健全であれば、耐力低下は起こさないため、表面の補修のみ行うことが適当です。

まとめ

ひび割れの補修方法について

①構造上の有害度、②進行度、③ひび割れの原因 からコストに見合った適切な方法を選択する必要があります。

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