ボーリング(土質)柱状図の読み方
地盤調査結果には、土質柱状図が用いられます。土質柱状図では、土質の名称がアルファベットで書かれている場合が一般的です。そこで、このページでは、土質柱状図の読み方について、まとめたいと思います。
引用元:習志野市HP(https://www.city.narashino.lg.jp/kurashi/bosaibohan/jisin_00/340520151207110453959.files/kasumi.pdf)
堆積環境「沖積層、洪積層」
沖積世:A(Alluvium)
沖積層:おおよそ2万年前~1万8000年前に海水面が最も低下した時期(最終氷河期)以降に、海水面の上昇と共に河川や沿岸域を中心に堆積した地層。
洪積層:D(Diluvium)
洪積層:沖積層が堆積するよりも前の時期に堆積した地層。
その他の堆積環境
柱状図を見ると、堆積順に下から洪積層D、沖積層Aと続き、地表面は埋土Fや盛土Bとなっている場合があります。それぞれのイニシャルの意味は次のとおりです。
盛土:B(Banking)
切土:C(Cut)
土質区分「礫、砂、シルト、粘土」
土質区分を表すイニシャルは次のとおりです。
砂質土:s(Sand)
シルト:m(Silt)
粘性土:c(Clay)
<参考>JISによる粒径区分
JIS A 1204 | 細粒分 | 粗粒分 | 石分 | ||
粘土 | シルト | 砂 | れき | 石 | |
粒径(mm) | 0.005 | 0.075 | 2.0 | 75.0 |
細粒分による区分
構造計算においては、シルトは「粘性土」と同じ扱いとなります。
細粒分とは、JISによると粒径が0.075mm未満の土粒子をいいます。
その他の堆積環境
堆積環境には、他にも様々なものがあります。ここでは、代表例として2つご紹介します。
(高)有機質土:p(Peat)
支持層と工学的基盤
地盤調査結果から、建物の設計を行うために必要な地層を決定します。設計時に設定する地層は、主に次のとおりです。
工学的基盤:耐震設計のための設計用入力地震動を入力する基盤
表層地盤 :工学的基盤より浅い部分の地盤
支持層とは
支持層の目安は、砂質土、礫質土ではN値が50(または60)以上、粘性土では20~30以上です。建物の重量などを考慮して、設計者が適切に設定する必要があります。
工学的基盤とは
工学的基盤は、一般的にPS検層結果によるせん断波速度VS=300~700m/sの層とされていますが、VS=400m/s以上で、厚さ5m以上の層とする文献もあります。便宜的に、VS=400m/s以上を目安とする場合が多いです。
引用元:日本建築学会、建築基礎構造設計指針、2019、11
せん断波速度VS
せん断波速度VSは地盤を伝わる地震力の算定や、杭にはたらく水平力の計算等に用いる、せん断剛性や変形係数を導く定数として利用されます。PS検層※1から求めることが基本ですが、概算設計時など、事前調査段階などの概略検討では、N値※2による関係式から推定します。
※1(PS検層):ボーリング孔を利用して、地盤内を伝播する弾性波P(縦)波・S(横)波の深さ方向の速度分布を測定するもの
※2(N値):Numerical value(回数)、地盤の固さを表す数値、標準貫入試験によって求められる数値で、重り(63.5±0.5kg)を76±1cmの高さから自由落下させ、土中の標準貫入試験用サンプラーを地盤に、30cm打ち込まれるのに要する打撃の回数をN値といいます。
せん断波速度の算定式
$$V_{S}=69{N}^{0.17}\left(\frac{{H}}{{H_0}}\right)^{0.2}{Y}_{G}{S}_{T}{・・・修正太田・後藤式}$$
VS:せん断波速度(m/s)
N:層の平均N値
H:地表面から層の中心までの深度(m)
H0:基準震度(m)
Yg:地質年代係数(沖積層1.0、洪積層1.3)
St:土質に応じた係数(粘性土1.0、砂質土・砂礫土1.1、礫質土1.4)
$$V_{S}={a}{N}^{b}+{c}{・・・修正今井・殿内式}$$
土質区分 | 係数 | |||
a | b | c | ||
沖積層 | 粘性土 | 50 | 0.42 | 80 |
砂質土 | 90 | 0.30 | 0 | |
礫質土 | 80 | 0.38 | ||
洪積層 | 粘性土 | 130 | 0.29 | |
砂質土 | 110 | 0.30 | ||
礫質土 | 140 | 0.26 |
まとめ
柱状図の読み方について、まずは書いてある記号や文字の意味をまとめました。今後は、さらに深く掘り下げて記事を書いていく予定です。