コンクリート診断士 問題と解説Vol.80
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【問386_分極抵抗法】
分極抵抗法の測定原理に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)分極抵抗法は鉄筋を自然電位から、⊿E変化させたとき生じた微小電流⊿Iを計測し、鉄筋の腐食速度を測定する方法である。
(2)分極抵抗法には直流法と交流法があり、一般に交流法が用いられる。
(3)分極抵抗法では分極抵抗、溶液抵抗および電気二重層容量からなる回路を用いる。高周波の電流を流すと、分極抵抗と溶液抵抗の和が測定され、低周波の電流を流すと溶液抵抗のみ測定される。
(4)腐食速度は、分極抵抗に反比例する。
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正解(3)
(1)〇:問題のとおりです。分極とは、電流が流れることで、電位が変化することを言います。外部電極に電流を流すことで外部電源の電位が変化し、外部電源の電位が変化すると鉄筋が自然電位から⊿E変化します。鉄筋の電位が変化すると、鉄筋に微小電流⊿Iが生じます。
(2)〇:問題のとおりです。分極抵抗法には直流法と交流法があり、一般に交流インピーダンス法などの、交流法が用いられます。インピーダンスとは、交流回路における、電流の流れにくさを数値化したもので、電圧と電流の比を表します。交流では、周波数によって電流の流れにくさが変化するため、直流における抵抗と区別されます。
(3)×:誤りです。高周波の電流を流すと、全体で測定される抵抗は溶液抵抗のみとなります。一方、低周波の電流を流すと、電流全体の抵抗は分極抵抗と溶液抵抗の和として測定されます。高低2周波の抵抗値の差から分極抵抗が求められるので、そこから鉄筋の腐食速度を推定できます。
(4)〇:問題のとおりです。分極抵抗法において、腐食速度は、分極抵抗に反比例します。
【問387_アルカリシリカ反応】
アルカリシリカ反応性鉱物の調査に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)骨材の、微細な結晶の調査で、偏光顕微鏡では判定が困難な場合は、粉末X線回折装置による分析と組み合わせる。
(2)反応性鉱物として、微小質石英を含む骨材は反応速度が速い。
(3)反応性鉱物として、微小質石英を含む骨材は反応速度が遅く、化学法やモルタルバー法では反応性を検出できないため、走査型電子顕微鏡やエネルギー分散型X線分光器を用いて測定する。
(4)微小質石英を含む鉱物には、チャートなどの堆積岩がある。
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正解(2)
(1)〇:問題のとおりです。微細な結晶の調査で、偏光顕微鏡では判定が困難な場合は、粉末X線回折装置による分析と組み合わせます。
(2)×:誤りです。反応性鉱物として、微小質石英を含む骨材は反応速度が遅く、化学法やモルタルバー法では反応性を検出できません。
(3)〇:問題のとおりです。反応速度が遅く、化学法やモルタルバー法では反応性を検出できない場合、走査型電子顕微鏡や、エネルギー分散型X線分光器を用いて測定します。
(4)〇:問題のとおりです。微小質石英を含む鉱物には、チャートなどの堆積岩があります。
【問388_示差熱重量分析】
セメント硬化体中に含まれる、化合物の定量方法に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)示差熱重量分析によって、水酸化カルシウムやエトリンガイトなどの水和反応生成物の定量が可能である。
(2)示差熱重量分析において、水酸化カルシウムの脱水反応は450℃付近の吸熱ピークとして現れます。
(3)示差熱重量分析において、炭酸カルシウム量は、脱炭酸が生じる700℃付近の質量減少から算出する。
(4)示差熱重量分析において、TG曲線、DTA曲線共に質量の減少が遅い方がコンクリートの炭酸化が進んでいる。
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正解(2)
(1)〇:問題のとおりです。示差熱重量分析によって、水酸化カルシウムや、エトリンガイトなどの、水和反応生成物の定量が可能です。エトリンガイトは70~100℃で熱により消失します。
(2)×:誤りです。示差熱重量分析において、水酸化カルシウムの脱水反応は、50℃付近の吸熱ピークとして現れます。
(3)〇:問題のとおりです。示差熱重量分析において、炭酸カルシウム量は脱炭酸が生じる700℃付近の質量減少から算出します。
(4)〇:問題のとおりです。示差熱重量分析において、TG曲線、DTA曲線共に質量の減少が遅い方が、コンクリートの炭酸化が進んでいます。水酸化カルシウムの熱分解温度は450℃前後に対し、炭酸カルシウムの熱分解温度は700℃前後であるため、質量の減少が早いということは水酸化カルシウム量が多く、炭酸化が進んでいない状態と言えます。
【問389_ひび割れ調査】
竣工後1年が経過したRC造建築物の床スラブ上面に生じたひび割れに関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)梁際の床スラブ上面にひび割れが生じているため、床スラブの厚さが設計値より小さい可能性がある。
(2)梁際の床スラブ上面にひび割れが生じているため、上端筋が設計位置より下がっている可能性がある。
(3)梁際の床スラブ上面にひび割れが生じているため、下端筋のかぶり厚さが設計値より小さい可能性がある。
(4)梁際の床スラブ上面にひび割れが生じているため、コンクリート強度が設計基準強度よりも低い可能性がある。
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正解(3)
(1)〇:問題のとおりです。梁際の、床スラブ上面にひび割れが生じているため、床スラブの厚さが設計値より小さい可能性があります。
(2)〇:問題のとおりです。梁際の、床スラブ上面にひび割れが生じている場合、上端筋が、設計位置より下がっている可能性があります。
(3)×:誤りです。下端筋の、かぶり厚さが設計値より小さい場合、スラブの下面に、鉄筋に沿ったひび割れが生じる可能性は高いですが、梁際の、床スラブ上面にひび割れが生じる原因にはなりません。
(4)〇:問題のとおりです。コンクリート強度が、設計基準強度よりも低い場合、あらゆるひび割れの発生原因となります。
【問390_ひび割れ調査】
夏期に施工された4階建てRC造の、外壁に生じたひび割れに関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)最上階の両側部分にハの字型のひび割れが生じていたため、冬期の温度低下に伴う、屋上スラブの収縮によるものであると判断した。
(2)1階の両側部分に逆ハの字型のひび割れが生じていたため、冬期の乾燥および外気温度の低下による、地上躯体全体の収縮を地中梁が拘束することによるものであると判断した。
(3)1階の両側部分に生じた逆ハの字型のひび割れは、冬期よりも夏期に施工されたほうが、ひび割れが発生しやすい
(4)階高の約半分の高さに、水平方向のひび割れが続いていたため、コールドジョイントが生じたと判断した。
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正解(1)
(1)×:誤りです。最上階の両側部分に生じるハの字型のひび割れは、屋上スラブの膨張が原因である可能性が高いです。
(2)〇:問題のとおりです。1階の両側部分に逆ハの字型のひび割れが生じていた場合、冬期の乾燥および外気温度の低下による、地上躯体全体の収縮を地中梁が拘束することによるものである可能性が高いです。
(3)×:誤りです。夏期に施工されたコンクリート建築物は、気温の低下と共に収縮し、半年後の冬期が収縮ひずみの最大を示します。その後、気温の上昇と共に膨張しますが、収縮ひずみが残留するため、ひび割れが発生しやすくなります。
(4)〇:問題のとおりです。夏期に施工されたコンクリート構造物は、凝結が早く、打ち重ね可能時間間隔が短くなるため、コールドジョイントが生じる可能性が高くなります。