【No.56】
各種コンクリートの体積変化およびひび割れに関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)流動化コンクリートの乾燥収縮ひずみは,スランプが同程度の普通コンクリートに比べて小さい。
(2)高流動コンクリートの自己収縮ひずみは,水結合材比が小さいほど大きい。
(3)高強度コンクリートのプラスティック収縮ひび割れは,普通コンクリートに比べて生じにくい。
(4)マスコンクリートの温度ひび割れは,表面の温度降下が急激であるほど生じやすい。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。流動化コンクリートの乾燥収縮ひずみは,ベースコンクリートの値とほぼ等しく,同程度のスランプを有する普通コンクリートよりも10~15%程度小さくなります。
(2)○正しい。高流動コンクリートの自己収縮は,使用する粉体の種類によって傾向は異なりますが,一般に水結合材比の低下とともに増大します。
(3)×誤り。高強度コンクリートは水セメント比がきわめて小さいためブリーディングがはとんど生じません。そのため,コンクリート表面にプラスチック収縮ひび割れが生じやすくなります。
(4)○正しい。マスコンクリードの温度ひび割れの発生を抑制するためには,調合等により内部温度をできるだけ低くすることと,内部が最高温度に達した後は表面部を保温して内部温度と表面部の温度差をできるだけ小さくすることが重要です。
【No.57】
コンクリートの圧縮強度に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)載荷速度を大きくすると,圧縮強度の試験値は大きくなる。
(2)試験直前に供試体表面を乾燥させると,圧縮強度の試験値は大きくなる。
(3)直径が150mmで高さが300mmの円柱供試体から求めた圧縮強度の試験値は,一辺が150mmの立方供試体から求めた値より大きくなる。
(4)直径と高さの比が1:2の円柱供試体では,直径が小さいものほど,圧縮強度の試験値は大きくなる。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。圧縮強度試験時の載荷速度はコンクリートの破壊性状に影響を及ぼします。一般には,載荷速度が速くなると見掛けの圧縮強度は増大します。JISA1108-2006(コンクリートの圧縮強度試験方法)では,載荷速度を毎秒0.6±0.4N/mm2に規定しています。
(2)○正しい。圧縮強度試験時に供試体を乾かすと,濡れたままの状態で試験をした場合よりも見掛けの圧縮強度は大きくなります。
(3)×誤り。角柱隅角部への応力集中やコンクリート締め固めの不十分などが原因となり,高さが同じ場合,角柱供試体の圧縮強度は円柱供試体よりも小さいです。また,供試体端面の面積が大きくなると試験機加圧板との間の摩擦力が大きくなり,横方向の変形が拘束されやすくなるため,供試体の直径に対する高さの比が小さいほど圧縮強度は大きくなります。
(4)○正しい。供試体の形状が相似である場合,一般に供試体の寸法が小さいほど見かけの圧縮強度は大きくなります。ただし,一般には直径10cm(高さ20cm)の供試体と直径15cm(高さ30cm)の供試体の圧縮強度は実用上は同じと考えてよいです。
【No.58】
コンクリートの各種特性値の求め方に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)曲げ強度は,角柱供試体の曲げ破壊時の曲げモーメントを,供試体の断面係数で除して求める。
(2)引張強度(Ft)は,円柱供試体(直径d,長さl)の割裂引張強度試験から求めた最大荷重(P)をπ・d・lで除して,Ft=2P/(π・d・l)として求める。
(3)静弾性係数は,圧縮試験における最大荷重を,そのときのひずみで除して求める。
(4)ポアソン比は,圧縮試験における横ひずみを,そのときの縦ひずみで除して求める。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。曲げ強度(Fb)の試験方法はJISA1106-2006(コンクリートの曲げ強度試験方法)に規定されており,角柱供試体(15×15×53cmまたは10×10×40cm)を用い,3等分点載荷で行います。最大曲げモーメントM(破壊モーメント),断面係数Zから,式Fb=M/Z用いて算出します。
(2)○正しい。引張強度の試験方法はJISA1113-2006(コンクリートの割裂引張強度試験方法)に規定されており,円柱供試体を横に寝かせて上下より圧縮荷重を加え供試体の中心軸を含む一様な引張応力が鉛直面に生ずることを利用した方法です。
(3)×誤り。静弾性係数には,①初期接線弾性係数(Ei),②割線弾性係数(Ec)および③接線弾性係数(Et)の3種類があります。一般に鉄筋コンクリートの設計に用いられるのは,静的破壊強度の1/3の応力の点と原点を結んだ直線の勾配で表される割線弾性係数(Ec)です。
(4)○正しい。コンクリートに軸方向の力を加えたとき,その軸方向のひずみと直角方向のひずみの絶対値の比をポアソン比(μ)と呼びます。一般に,コンクリートの圧縮時のポアソン比は,1/5~1/7です。
【No.59】
コンクリートの体積変化およびひび割れに関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)乾燥収縮ひずみは,部材の断面寸法が大きいほど小さくなる。
(2)自己収縮ひずみは,水セメント比が大きいほど大きくなる。
(3)プラスティック収縮ひび割れは,セメント量が多いほど発生しやすい。
(4)沈下ひび割れは,ブリーディング量が多いほど発生しやすい。
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。コンクリートの乾燥収縮に影響を及ぼす因子としては単位水量,セメント量,骨材の品質,部材の寸法,養生方法などがあげられます。このうち部材の寸法については,大きいほど乾燥収縮は小さくなります。
(2)×誤り。一般的なコンクリートの自己収縮は,乾燥収縮に比べて小さいため,従来は無視されてきました。しかし,高強度コンクリートや高流動コンクリートのように,セメント量が多く,かつシリカフュームなどの超微粒子を混和材として使用すると,乾燥収縮に匹敵する収縮量を示す場合があります。一般に,自己収縮ひび割れはセメント量が多く,かつ水セメント比の小さい富調合・配合の高強度コンクリートなどに生じる場合が多いです。
(3)○正しい。セメントや混和材などの結合材の量が多いコンクリートは,一般にブリーディングが極端に少なくなるため,乾燥が原因となるコンクリート表層部のプラスチック収縮ひび割れが発生しやすいです。
(4)○正しい。ブリーディング量の多いコンクリートは,一般に単位水量が多いです。そのため,打設後の沈下量が大きくなりひび割れが発生しやすいです。
【No.60】
コンクリートの熱的性質と耐火性に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)500℃に加熱されたコンクリートの残存圧縮強度は,加熱前の値の60%以下に低下する。
(2)500℃に加熱されたコンクリートの残存弾性係数は,加熱前の値の10~20%まで低下する。
(3)熱膨張係数は,水セメント比の影響を大きく受けるが,骨材の種類による影響は小さい。
(4)水セメント比の小さいコンクリートや含水率の高いコンクリートは,火災時に爆裂しやすい。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。火災などでコンクリートが高温にさらされると圧縮強度が低下し,約500℃で常温時の60%以下まで低下します。これは,主としてセメントペースト中の水和化合物の結合水の脱水や水酸化カルシウムなどの水和物の分解が原因です。その他,骨材とセメントペーストの熱膨張率の差による組織のゆるみなどが挙げられます。
(2)○正しい。火災などコンクリートが高温にさらされると弾性係数は圧縮強度以上に低下し,約500℃で常温時の10~20%まで低下します。なお,火害温度が500℃程度までであれば,再度養生することによって,低下した強度や弾性係数は自己治癒作用によって徐々に回復します。
(3)×誤り。コンクリートの耐熱性にもっとも影響を及ぼす要因は火害温度の最高到達温度で,次いで使用骨材の岩種です。石英を含む花崗岩や砂岩系の骨材は575℃で膨張が急増し組織が崩壊します。その後,石灰石系の骨材が750℃以上で分解が始まります。耐火性を向上させるためには,安山岩などの火山岩系の骨材や高炉スラグ骨材などの熱膨張係数の比較的小さい骨材を使用することが有効です。
(4)○正しい。吸水率の大きい軽量骨材を十分含水させた状態で使用した場合や,コンクリートの組織が緻密で水蒸気の移動や蒸発が起りにくい低水セメント比の高強度コンクリートの場合には爆裂を生じる可能性が高くなります。